Give me identity ! イソップ・カールは学校が好きだった。
『ある日』のことである。イソップ・カールはこの『ある日』が嫌いだ。それは変哲もない休日の事を指している。学生の休日と言えば、堅苦しいような若々しいような制服を脱ぎさって、自由な服装で自由な時間を過ごす日々のこと。その『ある日』が訪れる度、イソップの幼いながらに眉目秀麗である小さな顔がぐしや、と歪む。
理由と言えば『私服を着たくない』ただそれだけだった。なぜ? と問われてもイソップは決して口を開かない。自分が少数派だと理解しているのだ。
齢十六歳現在。イソップは自我同一性を獲得することができないでいた。所謂、アイデンティティの確立が出来ていない。もちろん、イソップの年齢は自我同一性を育む渦中にあり、同年代の少年少女たちも完成した自我同一性を得ているわけではない。多感な時期と呼ばれるとおり、色んな物事、人物、環境から己を構築する一部を必死にかき集めている最中だ。
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