Reserved 48.2凝視、という表現がぴったりなほど熱心に、その視線は真っ直ぐこちらに注がれていた。
紙面を踊る文字に、それを紡ぐ指先に。
勉強を始めてからしばらく、その視線に気づいた朔夜は内心居心地の悪さを覚えながら、正面に座る視線の主-朝日奈を眼鏡越しにチラリと見遣る。
ただひたすらに朔夜の手元を見続けている朝日奈の周りだけ、完全に時が止まってしまっている。
彼女の目の前に広げられたノートに書かれているのは、今日の日付、ただそれだけである。
朔夜は大げさに溜め息を吐き、「朝日奈」と呆れたように名前を呼んだ。
ハッと我に返った朝日奈は、けれど、すぐにへらっと緊張感の欠片も無い笑みを浮かべ「なに?」と問い返してきた。
「なに?じゃない…勉強、全然進んでるように見えないが。君が泣きついてきたから、ここにいるのに…他に気を取られて集中できないなら、今日はもう終わりにしよう」
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