香りを染めて「こちらを差し上げます」
そう言って唯は掌の上に置かれた小瓶に瞬きを繰り返した。
「これは…香水、ですか?」
「ええ、香ってみてください。」
蓋を開け、匂いを嗅ぐと勢いよく唯は顔を上げ浮葉の顔を見た。
「浮葉さんの香り!」
「…ふふ、ええ。私が気に入ってる香りです、付き合うことになったのですし贈りたいと思って」
「ありがとうございます!す、すごく嬉しいですっ」
興奮気味の唯に浮葉は笑みを返しながらそのまま腕を伸ばし香水に目を奪われている唯を抱きしめた。途端、唯は言葉を飲み込み顔を赤らめたまま浮葉の顔を見た。
「唯さん、これからは…私に会いに来るときはこの香水をつけてきてください。そうやって私色に染まってくれるあなたを待って、そしてこうやって抱きしめたいと…そう、思うのです」
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