丸ごと愛してる女に不自由してるなんて思ったことはねえ。
でも本当に好いた女にはなかなか相手にされねえ、世の中そんなもんだ。
もうそろそろ夜が明けそうな空を見てスマホを取り出すと5時前だった。
いい加減溜まってる書類なんとかしろよ、と九井に言われ取り掛かったのが2時。
案外集中してやれば終わるもんだ、と思いながら椅子から立ち上がり大きく伸び上がった。
腰と肩からバキバキと音がする。
マッサージ行きてえな…と頭の片隅で考えながらジャケットを持ち事務所を出ようとすると、別の部屋で事務作業をしているあいつを見つけた。
「おい、まだやってんのか」
声をかけると驚いたのか勢いよく頭を上げた。
「あ、三途さん…もう少しで終わります。帰られるんですか?お疲れ様でした」
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