文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day11「あ、いたいた!」
燦々と降り注ぐ陽光に麦わら帽子のような髪を輝かせながら、無邪気に声を上げたのはフェルマーで。その声に大木を背に文庫本へと視線を落としていた空閑はゆっくりと晴れた空と同じ色をしたフェルマーの瞳へと視線を向ける。
「あれ? ヴィンどうしたの?」
不思議そうに首を傾げる空閑に、フェルマーの隣に立っている高師は呆れたようなため息を一つ。
「吉嗣先生がお前達を探してたぞ。学生向けのデモでフライトするのに空閑も汐見もどこ行ったって」
高師の説明にあっと声を上げながら左手に巻いた大ぶりな腕時計へと視線を落とす。
「やば、アマネ。起きて起きて」
胡座をかいた空閑の腿を枕にしてすやすやと眠る汐見を揺らしても、鬱陶しげに唸った汐見は空閑の手をパシリと払う。
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