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    yamagawa_ma2o

    山側(@yamagawa_ma2o)のポイポイ部屋。

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    yamagawa_ma2o

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    天官賜福(英語版)読破記念&日本語版3巻発売おめでとうにかこつけて書いた初書き花怜。何でも許せる人向け。帯の言葉をどうしても入れたくて捻じ込みました。ネタバレというほどではないけど暮らしている場所とかが完走した人向けです。捏造モブ神官(名前なし)がちょっと出てきます。

    ##花怜
    ##TGCF

    太子殿下弹奏古筝(太子殿下、琴を奏でる)「ガラクタや不用品を回収しています。お家の中に処分に困っているものはありませんか?」
     ガラクタ集めは、色々なことが終わった後の今でも彼の暮らしの中にある。八百年の中で染みついた行動は、中々変えることが難しいのだ。そういうわけで、謝憐は今日も朝からガラクタを集めていた。
     昔と違う点は、必ずしも生活をするためのガラクタ集めをしているわけではないことだ。謝憐はガラクタ集めに関してあまり苦労したことはないが、その昔は換金性の高いものが集められないと少しがっかりすることもあった。けれども今は、千灯観か極楽坊に持って帰って楽しめそうなものであれば、謝憐は何でも集めている。
     それに、ガラクタ集めからは人々の暮らし向きが見える。神々の噂話の書物を拾うこともあれば、打ち捨てられた小さな神像にこっそりと居場所を提供してやることもあった。貧しい村では拾った本を子どもに読んで聞かせたり、売れそうなものを自分たちの神像の横にこっそり置いていったりすることもあった。
     この日、謝憐は新しく屋敷に引っ越してきたという役人の家に呼んでもらい、前の住民が残していったと思われる不用品をたくさん譲ってもらった。役人の前の住民は商人だったようで、それこそ謝憐の口角が思わず上がってしまうような骨董品も存在した。ただ、不思議だったのは、他のものはまだ比較的新しいものも多かったのに対し、ボロボロで拭いても手に負えないような埃を被った琴が一面あったことである。
     謝憐はガラクタ集めを終えると、それを牛車に積んで太蒼山の小屋に行った。極楽坊や千灯観にガラクタを置くのは躊躇われるので、彼は時折ここで集めたものを整理したり、仙京から来た神官に対応したりしている。今日はこれから文神が一人やってきて、今月の会議の議題の報告事項や審議事項について説明してくれるのだという。謝憐は通霊陣で構わないと言ったのだが、この間大規模通信障害が発生したので、改善に取り組んでいる間は長時間の通霊を控えるようお達しが出ているらしい。
    「太子殿下」
    「こんにちは。わざわざありがとうございます」
     文神は庶務を務めており、霊文のところから回ってきた会議の議題を整理している。詩作に優れている上人間だった頃に短い期間ながら官吏の経験もあるため、文章は美しく、無駄もない。謝憐は一通り説明を聞き、いくつかのやりとりをして打ち合わせを終えた。
    「お疲れさまでした。ありがとうございます」
    「いえ、仕事ですので……。ところで、太子殿下。……一つお尋ねしても?」
    「ええ、どうぞ」
    「そちらの琴は、どちらで?」
     謝憐は数あるガラクタの中でもガラクタ中のガラクタである琴が目に付いたのであろう文神に、拾った経緯を話した。文神は「さようでしたか」と一言言うと、関心を失ったのかそれ以上は聞かずに仙京へ帰っていった。
     謝憐は集めたガラクタを整理して、結局なぜか何の役にも立たないはずのボロ琴が気になった。彼は卓の上に琴を置くと、辛うじて張ってあった弦を戯れに弾いてみた。謝憐は「弾いた」つもりであったのだが、琴は手ひどくいじめられてしまったらしい。弦は最期の抵抗なのか「バチン」と音を立てて、謝憐の指に微かな切り傷を作った。少しだけ血が垂れてしまったが、謝憐は指に包帯を巻いて琴に謝った。
    「ごめん、弦を切るほど強く弾いたつもりはなかったんだ……。そうだ、私は道端で楽器を演奏しようとしたこともあったんだけど、人に聴かせられるほど上手く弾けなくて大道芸をしたんだったな……」
     謝憐はどういう訳か放っておけず、いじめられた哀れな琴を布で包むとそれを背負い、千灯観に向かった。


     花城は千灯観で字の練習を言いつけられていたが、一度「離思」の一節を書くともうやめにしてしまったらしい。神像を置いていないせいで今ではすっかり牀榻代わりのようになっている祭壇の上に寝転んで、謝憐が以前拾った本を読んでいた。
    「三郎、ただいま」
    「兄さん、お帰り」
    「今日はあまり字の練習をしなかったみたいだ」
    「兄さんがいないと練習にならないから、早めに切り上げた。ところで、何か面白いものを拾った?」
     花城は何の反省も述べずに祭壇から降りると、謝憐の背中にあった琴を降ろし、書き物の道具を避けて卓の上に置いた。
    「この琴は変わっているね」
    「ハハハ、そうかもしれない。私が弾こうとしたら辛うじてあった弦も切れてしまって、本当にガラクタになってしまったところなんだ」
    「兄さん、怪我は?」
     花城は、すぐに謝憐の手を取って心配そうに確認した。謝憐からすれば取るに足らない怪我だが、彼は包帯を注意深く外して本当に大したことのない怪我かどうかを自分の目で確認しなければ気が済まない。尤も、そうさせてしまったのは謝憐なので、彼は花城の方を申し訳なさそうに見た。
    「大丈夫、大したことないよ。この間の針仕事の方がよほど大変だった」
    「……」
     花城は謝憐の怪我を注意深く確認したいのか、怪我をした指をじっくり眺めた。傷はもう塞がっていて、跡もほとんど見えない。しかし、花城は次の瞬間、自身の口に謝憐の怪我をした指を含んだ。
    「さ、三郎! そ、そんなこと……」
    「兄さん、ちゃんと消毒をしないとだめだよ」
     一体三界のどこにそんな消毒の仕方があるのだろう? 謝憐は花城を困った様子で見た。
    「兄さん、この怪我は一見するともう治っているけれど、また開いてしまうかもしれない。……早くきちんと治るように口づけが必要だ」
     おまけに花城は謝憐にそんなことまで言い始めた。彼は随分回りくどい言い方をしているが、謝憐はふと、「ただいまの口づけ」がまだだったのを思い出した。
    「さ、三郎……そ、その……、た、ただいま」
     謝憐が改めて伝えてその準備をすると、花城はやさしく彼の唇に自身のを重ね、そしてゆっくりと深く口づけた。
    「おかえりなさい、太子殿下」
     花城はそう言うと、笑いながら謝憐の腰を抱いた。謝憐も嬉しくなってもう一度「ただいま」と言いながら花城の肩に手を回した。


     異変が起きたのは、その晩のことだった。
     二人は極楽坊に琴を持ち帰ったのだが、卓の上に置いたきりすっかり忘れて日々の営みに耽っていた。花城は極めてやさしく謝憐を牀榻に誘うが、夜の半分は激しく謝憐を求めて極上の冒涜を彼に施す。謝憐は未だに夜着に手を掛けられるその時には恥じらいを覚えるものの、疲れて眠る頃には、おやすみの口づけだけで幸せに満たされてどうでもよくなっていた。
     二人は朝までぐっすり眠るつもりだったのだが、一時辰ほど経った頃、突如部屋にけたたましい「ガタガタ」という音が響き渡った。そして、荒れ狂う波のような琴の音が響き、二人ともたたき起こされる羽目になった。謝憐は慌てて琴に飛びつき、この騒音を止めようとするが鳴りやまない。弦がない琴が鳴りやむ方法が、一体どこにあるというのだろう?
     謝憐は夜着が埃まみれになるのも構わず暫く抱きしめていたが、気がつくと傍らに花城がいた。彼もたたき起こされたらしい。
    「三郎、うるさかっただろう。大丈夫?」
    「俺は何ともないよ。それより兄さん、昼間誰かに会わなかった?」
     謝憐は暫くそれが「誰」を指すのか考えた。恐らく、琴があった家の新しい住人は関係ないだろう。だとすれば――。
    「……ええと、この琴は家主が引っ越した家に置き去りになっていたから、新しく引っ越してきた人間の役人は関係ないと思う。そうだ、太蒼山に庶務をしている神官が来た」
     謝憐は神官の名前を告げた。花城は何か面白いことを思い出したのか、夜中に眠りを邪魔されたにも関わらず眉を上げ、上機嫌に琴を見た。
    「三郎、何か知っているのか?」
    「もちろん知っている。太子殿下のお望みなら話すよ」


     百年余り前、琴の名手がいた。
     彼は、唯一の友である詩人にいつも琴を聴かせていた。詩人は日頃時世を論じ、雑務に勤しむ下級役人であった。しかし山奥にあるこの友の庵に行くときには、簡素な格好で伴も付けずに訪ね、幽寂閑雅の世界で友の琴に耳を傾け、美しい自然の中で詩作に耽っていた。詩人は歌も好んでおり、彼は詩作だけでなく、時折琴の音に歌を乗せた。
     下級役人では中々その詩歌の才を実践する機会に恵まれなかったが、彼は仕事をしながら、酒を飲みながらでも詩を作ることができた。また、即興で歌う歌の詩も非常に優れており、出世こそ友との時間のために断り続けていたものの、天劫を得て飛昇することになった。

    「それは、この詩人はすごく恵まれた才の持ち主だね」
    「確かに、運はなかなか良い方だ。だが、この木っ端役人は才能ではどうにもならないことを抱えていた。兄さん、続きを聞きたい?」
    「うん」

     謝憐は花城に続きを促した。
     詩人の友である琴の名手は、世間から隠れて異教を信仰していた。そのため、詩人は彼とともに天界へ昇るどころか、自身の飛昇を彼に告げることも出来なかったのである。
     琴の名手は、彼の神のことを唯一この詩人にだけ告白した。しかしその時、彼を心配した詩人は余計な口を挟んでしまい、結果として大喧嘩をしてしまったのである。しかもその喧嘩のすぐ後、地方役人としてそこそこの地位にあった琴の名手は、元々嫌われていた上司の計略により信仰を知られてしまい官職を解かれ、山奥へ逃れなければならなくなってしまった。
     それ以来、二人の間ではどんな些細な土地神の話ですらもされないこととなった。琴の名手にとっては、そんな神は「存在しない」のだから。
     詩人は結局、誰も点将せずに一人で天界に向かった。ただ、彼は自身の信頼していた家僕に、自身が病で死んだ旨を伝える手紙を出させた。
     琴の名手はその手紙を受け取ると、彼の死を嘆き悲しみ、密かに自身の神の教えに従い空の墓標を建てた。それだけでなく、もう二度と琴を弾かないと決め、彼が詩人の次に愛していた琴を、詩人の墓標の横に埋めてしまったのである。


     そしてどういう訳か、巡り巡ってこの琴は今、謝憐のもとにあるのだ。この琴は誰かに掘り起こされた挙句、謝憐の遊び道具にされてしまい、気の毒極まりない。謝憐は、目を覚ましてしまった琴が邪悪な力を持たないようにするため、再び封じなければならないと思った。
    「三郎」
     そう決意したはいいものの、謝憐は花城を困った声で呼ぶ羽目になった。
    「兄さん、どうして琴から離れないの?」
     謝憐は落ち着きを取り戻した琴の前に座って花城の話を聞いていたが、その話が終わってまた明日封じる方法を考えようと思ったのにも関わらず、何かの力で琴の前から離れられなくなっていた。
    「……ああ、どうも……この琴は、私がきちんと弾くまで離れさせてくれなくなってしまったみたいだ……」
     琴は、謝憐の僅かな血で目覚めていた。元々弦で指を切ることもあるこの楽器は、既に琴の名手の血をかなり吸っていたのだろう。いわば謝憐は、彼の出来の悪い弟子か何かだと思われているらしかった。意外なことに、花城は至って落ち着いた様子で謝憐を見て微笑んだ。
    「ちょうど俺も、兄さんの弾く琴を聴きたいと思っていたんだ」
    「三郎。私は楽器にはあまり縁が無くて……。そうだ、上手く弾けるようになったら、君が歌ってくれる?」
    「もちろん歌う。太子殿下の伴奏で歌えるとは、身に余る光栄です」
    「三郎、からかわないで」
     花城からやさしく、敬意に満ちた声を聞いて堪えられなくなり、謝憐は目線を落とした。するといつの間にか、琴に新しい弦が張られている。
    「殿下、最初の少しだけ俺が手ほどきをしても構いませんか?」
    「うん、構わないよ」
     謝憐は、いつも書の手ほどきをする側なのに、いざ自身の手に花城の白く長い手が重ねられると頭が沸騰しそうになった。花城は、謝憐に弦の弾き方や力加減を教えた。謝憐が少しまともに弾けるようになると、弦の一部が淡く光り、蛍のように浮かび上がった。
    「さあ、『先生』に従って弾いてみて」
     光は花城の言う通り、謝憐がどこを押さえるべきか指南してくれるようだった。何度か繰り返すうちに、最初はただの音の羅列だったものが、適切な余韻を持たせた曲として聴こえるようになっていった。花城はどういう訳か謝憐の視界から離れてどこかに行ったようだったが、気配はあるので気にせず練習することにした。
     謝憐が上手く演奏できるようになる頃には空が白み始めており、彼はうっすらと額や指の間に汗が浮かぶのを感じた。しかし、琴は手厳しいので休んでいる暇はない。眠気と闘いながら再び集中して琴に向かうと、謝憐の耳にどこからともなく琴の音以外の何かが聴こえてきた。
     非常に聴き心地がよく、落ち着いた、男性らしい低さがありながらも玲瓏な声。
     花城が歌っているのだと、謝憐はすぐに分かった。

     曲が終わると、花城は謝憐のすぐ後ろに佇んでいた。謝憐は思わず聴き惚れた余韻のまま、花城をぼうっと見上げた。
    「情熱的な演奏でした。太子殿下、あなたの素晴らしい演奏が聴けて嬉しいです」
    「三郎、君の歌もとても良かった。上手くて聴き入ってしまったよ」
     花城は謝憐にそう言われると、どこか照れ臭そうに眼を背けて、誤魔化すように言った。
    「兄さん、この曲を知ってる?」
    「いや、今までに色んな曲を聞きすぎて覚えてないか、本当に知らないのかも分からないんだ。もしかしてもう一度聴けば……あれ、琴がない……?」
     謝憐は慌てて何もない卓の上を手で何度か触った。しかし、そこに既に琴は存在せず、卓の前に縛り付けられていた謝憐も動けるようになっていた。花城はそれを見てクスっと笑った。
    「残念。兄さんの伴奏がないと歌えないな」
     謝憐も、花城に向かって穏やかな笑みを返した。

     琴は二人に何も告げず、この世から旅立ってしまったらしい。謝憐は線香を焚いてやり、琴が再び主と出会えるよう旅路を祈った。

    「太子殿下、昼間あなたが会ったという神官は、文神だよね?」
    「うん、そうだったよ。明日起きたら顛末を報告しようと思う」
     きっとあの文神は生前、琴の主を愛していたのだろう。だからこそ彼の信仰を尊重し、点将することもしなければ、彼の建てた異教の墓標に文句を言うこともなかったのだ。
     謝憐が欠伸を堪えながら報告について言うと、花城は遮った。
    「報告の必要はない。明日は遅くまでゆっくり寝よう。彼も、よく知っている楽器だと分かっていて、あなたにその琴のことを言わなかったはずだ」
     文神がかつて異教の信徒を愛していたということが知られるのは、これまでの神官の様々な不祥事を知っている謝憐にとっては、不祥事のうちにも入らないことのように思われた。けれども、花城の言う通りだろう。この事件は、謝憐が指に微小な傷を負った以外に怪我をした者がいるわけでもないし、誰かが精神的に害されたわけでもない。わざわざ会議の準備に追われる彼を邪魔するほどのことでもないだろう。
     そう思うと、謝憐は急に眠気を感じた。するとすぐに、自分の身体が浮くような感覚があり、花城に自分が抱き上げられたのだと分かった。
    「ありがとう、三郎」
    「兄さん、折角こんなに顔が近くにあるんだから、お礼ついでに俺にお休みの口づけをしてくれない?」
     謝憐は言われるがまま、花城の肩に腕を回して唇を近付けた。花城から伝わる法力が非常に心地よい。思いのほか、あの楽器は謝憐の力を使ったようだ。彼は目を閉じて、身体を花城に任せた。


     いくらかの月日の後。
     夜の沐浴を終えた謝憐は千灯観の祭壇に非常に美しい、白い玉の琴が佇んでいるのを見つけた。隣にいた花城が、謝憐の腰に手を回しながら言った。
    「この間届いたんだ。兄さんが弾きたくなったら、好きに弾いて」
     謝憐は花城にそう言われるとなんとなく嬉しくなって、琴の名手になった気分で適当につま弾いた。しかし次の瞬間、あの日練習したことがほとんど思い出せないことに気がついて、困惑した。音も、あの時ほど良くない気がする。
    「三郎、私はやっぱり楽器は向いてないみたいだ」
    「そう? じゃあ俺が弾く」
     花城は祭壇から琴を降ろして、いつも字の練習をしている卓の上に適当に置いた。そして、琴の代わりに謝憐を祭壇に横たえた。
    「弾くって、ふふ、私をここに運んでどうするんだ?」
    「決まってるよ。兄さんを弾く」
     謝憐はその返事に呆れ、思わずため息をついた。しかし、広い祭壇の上で花城と目が合うと、謝憐は彼に抱きつかずにはいられない。謝憐のはだけた夜着の袷のところに、長く細い、雪のような白さの指が伸びてきて、謝憐に触れる。どちらからともなく交わされた口づけは深く、千万の詩より雄弁に愛を伝える。それはやがて首筋から全身に広がり、謝憐は思わずあられもない不道徳な声を出した。
     その美しい音色は、彼だけが知っている。
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    yamagawa_ma2o

    PROGRESS花怜現代AU音楽パロ完結編。幸せになあれ~~~!!!!!って魔法をかけながら書きました。ハピエンです。
    すみませんが、③以降は原作(繁体字版とそれに準ずるもの)読んだ人向きの描写がはいっています。

    金曜日くらいに支部にまとめますが、ポイピク版は産地直送をコンセプトにしているので、推敲はほどほどにして早めに公開します。
    よろしくお願いします。
    花を待つ音④(終) コンサート本番、謝憐はどういうわけか花城の見立てで白いスーツを着ていた。
    「哥哥、やっぱり俺の予想通りだ。すごく似合ってる!」
    「本当かい? なんだか主役でもないのに目立ち過ぎないかな?」
    「俺にとっては哥哥が主役だからね」
     そう言って笑う花城はというと、装飾のついたシャツに赤い宝石と銀色の鎖のついたブローチをつけている。ジャケットとスラックスは黒いものだったが、ジャケットの裏地から見える光沢のある赤い生地が華やかさと季節感を演出していた。
     師青玄も白いスーツだったが、彼の方が生成色寄りで謝憐は雪のように白いものという違いがあり、共通点と相違点が適度に見えて舞台映えする。師青玄は中に緑色のシャツを着ていて、謝憐はあまり中が見えないが、薄い水色のシャツを着ていた。
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    yamagawa_ma2o

    DONE天官賜福(英語版)読破記念&日本語版3巻発売おめでとうにかこつけて書いた初書き花怜。何でも許せる人向け。帯の言葉をどうしても入れたくて捻じ込みました。ネタバレというほどではないけど暮らしている場所とかが完走した人向けです。捏造モブ神官(名前なし)がちょっと出てきます。
    太子殿下弹奏古筝(太子殿下、琴を奏でる)「ガラクタや不用品を回収しています。お家の中に処分に困っているものはありませんか?」
     ガラクタ集めは、色々なことが終わった後の今でも彼の暮らしの中にある。八百年の中で染みついた行動は、中々変えることが難しいのだ。そういうわけで、謝憐は今日も朝からガラクタを集めていた。
     昔と違う点は、必ずしも生活をするためのガラクタ集めをしているわけではないことだ。謝憐はガラクタ集めに関してあまり苦労したことはないが、その昔は換金性の高いものが集められないと少しがっかりすることもあった。けれども今は、千灯観か極楽坊に持って帰って楽しめそうなものであれば、謝憐は何でも集めている。
     それに、ガラクタ集めからは人々の暮らし向きが見える。神々の噂話の書物を拾うこともあれば、打ち捨てられた小さな神像にこっそりと居場所を提供してやることもあった。貧しい村では拾った本を子どもに読んで聞かせたり、売れそうなものを自分たちの神像の横にこっそり置いていったりすることもあった。
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