【萩景】化学の萩原先生と生徒景光の秘密の関係(18↑) 部活の無い木曜日。
授業終わりに化学実験室を訪れるのが、オレの密かな楽しみだった。
周りに誰もいないことを確認して、化学実験室の扉を開ける。電気の切られた部屋は大きな窓から差し込む夕日の色に染まり、部屋の隅には暗闇が転がっていた。
木製の四角い椅子が収められた黒い実験台を通り過ぎ、上下にスライドする黒板の横にある扉をノックする。普段生徒が立ち入ることの許されない、化学準備室。
「せ、せんせ……今いいですか?」
準備室の扉を少し開けて中を覗くと、細長い部屋の奥でパソコンに向かって作業をしている先生の背中が見えた。
「先生……」
カタカタと音を立てながら指を動かす先生の返事を待たずに部屋に入り、扉を背に静かに鍵をかける。
口癖のように「喧しい場所は嫌いだ」と気だるげに呟く萩原先生は、いつも準備室に籠って仕事をしていた。本来なら職員室で仕事をしなければならないが、この小さな高校で化学・生物・物理・地学の教科を一人で掛け持ちしている萩原先生は、忙しさを理由に準備室で仕事をすることを特別に許されていた。
定員割れをする田舎の高校だとしても、一人で四教科を掛け持ちするなんて普通じゃ考えられないが、頭のいい萩原先生だからこそこなせている、他の先生じゃできないことだと学生ながらに感じていた。
忙しさを理由に集団行動を主とする学校という場で、生徒の見本とならないといけない先生が集団の輪から外れる行為は良しとされないが、職員会議には毎回遅刻することなく出席し、議題に対し効率的かつ効果的な提案をするだけでなく、教員全員分の会議資料もまとめ、多忙な中、学校行事の役員を任されても完璧にこなす萩原先生に、学年主任や体育会系の先生たちも口を出せないでいた。
そんな萩原先生を妬む教員や、寡黙で自ら生徒とコミュニケーションを取ろうとしない先生に対し苦手意識を持つクラスメイトもいるが、オレはそんな先生を尊敬していた。
準備室の入り口から部屋の奥まで続く古びた棚には、薬品の入った瓶と実験器具が所狭しと並んでいた。その棚の向かい側には骨格模型や標本、授業で使う様々な資料が乱雑に置かれ、狭く圧迫感のある通路をキョロキョロと見回しながら、ゆっくりと歩みを進める。先生しかいない部屋なのに誰もいないか確認してしまうのは、独特なおどろおどろしい雰囲気のせいもあるが、理由はそれだけでは無かった。
彷徨わせた視線の先、施錠されたガラス戸に映る自分と目が合う。劇薬の横にぼんやりと映し出されるオレは、これから行われる行為に期待を膨らませ、くすんだガラス越しからでもわかるほど表情が緩んでいた。
「萩原先生…」
訪問者の存在に気付き、忙しなく動かしていた指を一瞬止めたが、こちらを振り向くことなく再び指を動かした。
「今日の授業で、わからないところがあって…」
呼びかけに応じず無言のまま作業を続ける先生へ言葉を投げかけると、背中越しに深いため息が聞こえた。
「俺、今忙しいんだけど。見てわかんない?」
「ご、ごめんなさい」
口では謝りながらも、先生の冷たい言葉とは対照的にじわりと頬が熱に染まる。
「わからないとこなんてないでしょ、だって諸伏いつも小テスト満点だし」
ギィと年季の入った灰色の椅子をくるりと回し、ワイシャツの上に羽織っている白衣がはらりと揺れる。メガネのブリッジの隙間から見える眉間に皺を寄せ、長い足を組む先生の姿に胸が高鳴り、学生服の袖をギュッと握り締めた。
「嘘をついてまで俺のとこに来るなんて、悪い子だな…」
頭を掻きながら二度目のため息をついた先生は冷たい視線を向け、デスクの横に設置された黒い実験台を指差した。
「職員会議の資料作るのに忙しいから、そこに座って」
座れと指示されたのは、実験台の下に納められた椅子ではなく机の上。それが何を意味するか理解しているオレは、期待と興奮で体中の熱が一気に湧き上がった。
「ズボン脱いで。いつもみたいに準備してるんでしょ?」
「……は、いっ」
興奮で息が上がり、返事をするだけなのに言葉に詰まってしまう。
上履きを脱いで震える手でベルトに手を掛ける。モジモジとしながらその場で下着ごと下ろそうとするが、緩く勃ち上がった自分の性器が邪魔をしてなかなか脱げない。