「今日サンズ全然こっち見ない」
さっきまでアンダインやパピルスたちとゲラゲラ笑いながら散々ビーチバレーを楽しんでいるようだったのに、のそのそとパラソルの影の中にやってきたかと思えばフリスクは拗ねた調子で苦情を口にする。
膝を抱えて波打ち際の方へ視線をやっているようだったので、サンズはチラリとフリスクを見た。
頰が丸い。膨れているらしい。
滑らかな肌の肩が剥き出しだ。それどころか、普段は陽にさらされない背中や、張りのありそうな太ももまでもが今日は見えてしまっている。
それもそのはず。今日は海水浴に来ていて、フリスクは水着姿だからだ。
しっかりと隣に座り込まれてしまったので、サンズはこっそりと苦笑して傍のクーラーボックスからソーダの缶を取り出した。フリスクに渡してやれば、ブスくれた顔でも一応受け取られる。
「アンタらニンゲンの文化がどうかは知らないけどさ、そうジロジロ見るもんでもないだろ」
気付かれたかとサンズは内心軽く驚く。まさかあからさまに態度に出すわけがないし、フリスクも今日は浮かれているようだから、多少いつもと違うことがあっても気に留めないだろうと踏んでいたのだが。
「…あんまりこの水着好きじゃなかった?」
ソーダの缶の中につぶやくようにフリスクが言う。まるで聞こえなくても良いとような、小さな小さな声。
サンズはまじまじとフリスクを見たが、相変わらず顔は逸らされたままだ。
実のところ見ていないわけではない。それどころか無意識でいるとつい目で追ってしまいそうになるので参った。その証拠に今日のフリスクの水着について、結構細かいディティールまで説明できる自信がある。
単に、フリスクに気づかれないように見ていただけだ。