約束を確かめる 私には遂行しなくていけないミッションがある。気品もプライドも、かの有名な山脈よりも高いんじゃないかと思っている奴に、プロポーズ紛いをしなくてはいけない。
10数年前の約束だ。きっとアイツは覚えていない。
「私結婚できないみたい」
「じゃぁ、てきれーき?が過ぎたらぼくが、迎えに行って、きみをお嫁さんにしてあげる」
「……ふふ、ありがとう」
幼少の頃、夏の間だけ逢えたあの可憐な子。その子に簡単な口約束して、指輪と行って野花で編んだ指輪を渡した。その次の夏から逢えなくなった。その子を探しはじめ、この荘園に来た日、驚いた。あの子に似た美しい男がいたから。
その男に何度かカマをかけてみた。あの子の親族かも知れないから。だが、蓋を開けてみればどうだ!あの子はこの美しい男だった。けれども約束については一切覚えておらず、勿論私についてもだ。
「この情報が欲しいのなら、慰み者になりませんか?」
彼が欲しがる情報をチラつかせて、身体を繋ぐ事に成功させた。彼の家庭環境は把握している。あとは、彼が欲しがる他者からの愛を与えてやればいい。私はフレデリック・クレイバーグを愛しているから、ちょうどいい。
だが、いつまでもこのままではいけない。そろそろ本当に私が貴方を愛していると認識させなければ。夜半のサロンは静寂のカーテンで包まれている。ソファーにはもうフレデリックはいて、静かに空想のピアノを奏でていた。
「クレイバーグさん、ピアノはもうおしまいです」
「呼び出しておいて遅刻なんて、」
「それに関してはお詫びしよう。話があるんだ」
「なんでしょう」
逃げられない様に真隣に座って、小さく綺麗な唇に触れる。
「貴方は私が性欲処理の為に組み敷いてると思っている様ですけど、違いますからね。私は貴方を10年以上前から愛しているからですよ。覚えてます?適齢期過ぎたら貴方を僕のお嫁さんにすると、言った坊主を」
「え、あの子は……きみだったのか?」
「気づくのが遅すぎる……。では、改めて。フレデリック・クレイバーグ、私と一緒に生きていきましょうか」
拒否権はありません。唇を塞いで、ここ最近随分と素直になったカラダで確かめてみようと思う。
——貴方が私を好きだって事を