お腹が寂しい
勇気を出してクライゴアにそう相談すると意外にも笑われることはなかった。
ただお腹に何かを入れないと気が済まないその状態を空腹と言うらしい、経口接種でのエネルギー補給ができるようになってから一年余りが経過した。
今になってようやく空腹を感じるとはどう言うことか。
キュルキュル
お腹の中、摂取したものがタンク内に料理を運ぼうと動いていても今は空っぽ、エネルギー残量もまだたくさんあると言うのに。
何をそんなに欲しているのか
「別にご飯の時以外にも食べて良いんだぞ?だから間食という言葉があるんだ」
「ハァ………」
「だから、ほれ」
クライゴアが今食べていたクッキーをひょいとマイクに手渡した。口に入れてパキパキと粉砕すると粉状になったものが喉の奥を刺激して盛大にむせた。
「あらら、いかんかったか、紅茶飲むか?」
ラメ入り紅茶を受け取り、飲み干してハアハアと息を整えて、お腹に何か入ったことにより空腹は落ち着いたかと思ったがやはりキュルキュルと音を鳴らす。
クライゴアは微笑んでいた。
他人がいっぱい食べているのを見て喜ぶタイプの男だからだろう。
「ふふふ、一度がっつり食べて落ち着かせても良いんだぞ、食べた量だけ報告してくれ」
「ソウデスネ………デハソウシテミマス」
ただのバグなら良かったのだが、クルクルと歯車が動く。
何をそんなエネルギーに変えたがっているのかこのままじゃ飽和状態になるじゃないか。
少食のクライゴアと少食のペニー
他の社員は大喰らいで、いつもよくそんなに入るなと思っていたのに。
結局、高校生男子と同じくらいの量を食べれば落ち着くことはわかったが、すぐお腹が空いてクルクルキュルキュルと音を鳴らしてはクライゴアから温かい視線を向けられて恥ずかしかった。