グラ刹SS その日出掛けた親の代わりに店番をしていた一二歳のウゴは、自分が応対した風変わりな客の事が気になっていた。
と言うのも、その日に部屋を取った客はその一人しか居らず、思春期特有の好奇心もあってウゴはその旅人へ不躾な(とは言っても彼自身にその自覚は無い)視線を隠そうともせずに熱心に注いでいた。
異邦人の顔立ちと黒髪に褐色肌、赤土の様な瞳の色と、首に撒かれた特徴的な赤いストール。
そして何より、片田舎の入り口に位置している街のこの宿に、人が一人入ってしまいそうなバックを抱えてやって来たのがウゴの目と興味を引いていた。
旅人は亜細亜人の様な寡黙さがあったが、決して子供を邪険にするような気質ではなかったのでウゴの無遠慮な質問にも凡そ答えてくれたし、雑談にも付き合ってくれた、相槌が非常に短いと言う条件はあったが。
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