心を込めて「心を込めて」
拝啓まだ見ぬ君へ
君は今何ができるかな
もう歩けるのだろうか?
それとも話す事ができるようなったのかな
その両方だろうか
どちらにせよ
元気にしているのならいいのだけど
こちらは相変わらずにぎやかだよ
君がそちらに移ってから色々なことがあったよ
ありすぎて手紙では追いつかないくらいだ
……
僕は…
君のことばかり考えてしまう
本当にいろんなことがあった、ありすぎてもう君の事を忘れそうになる
それでも…
キーボードを打つ手が止まる、続く言葉が思い浮かない
あの日からどれくらいたったのだろうか
届くはずのない手紙がたまっていく、
会えた時にまとめて渡すこともできない時間のたちすぎた私信たち
このまま引き出しの奥にしまい込むしかない哀れな思い
ため息一つ
読む相手のいない手紙を書いていても仕方がない
今日はこのままにしようとファイルを閉じたとき
後ろから声が聞こえた
それは懐かしい君の声
イスから転げ落ちそうになりながら振り返るとあの日分かれた君がいた
否
あの日より微妙に成長した君がいた
「修、久しぶりだな」
変わらない表情だけど少し伸びた身長と髪の色の変化を認めた
「ああ、久しぶりだ空閑」
まだ見ぬ生身の君へ
精一杯心を込めて
「お帰りなさい」
「俺が帰るのはここだけだ、ただいま修」
終了