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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    グラデカ小説。習作。

    ##メギド

    .

     例の騒動の後、フルカネリは王都預かりの身となりデカラビアもアジトで監視付きの生活を余儀なくされていた。だが、過度に拘束されることはなく、ソロモンの意向で軟禁のような形になっている。
     その動機はどうであれ、行ったことは立派な反逆だ。グラシャラボラスはもう気にしていないものの、普通はそう簡単には切り替えられない。他のメギドが遠巻きにするのもしょうがないのだろう。
     だが、元々仲間内での交流は盛んではなかったデカラビアだ。不自由は苦にすれど、詰めるような言葉にも軽くいなすか黙殺するかのどちらかのようで、意には介してはいないようだった。むしろ、親しげに話しかけられることこそ迷惑そうな節がある。
    「よう、デカラビア。何読んでんだ?」
     そう声をかけた瞬間、デカラビアの眉間に皺が寄りじとりと鋭い視線が向けられた。この顔である。
    護衛の仕事の合間を縫ってアジトに訪れる度、 こうして構っているのだが反応は芳しくない。どうせ一人なのだからと昼食に誘ってみるが、その渋面は相変わらずだ。
    「別に何でもいいだろう」
     素っ気ない返事を他所に、机に積まれた本を覗き込む。暇を持て余したデカラビアが本を読むくらいしかやることがないのはよく知っているが、そういう時に読んでいるのは大体図鑑であることが多い。だが、今日は珍しく物語を手繰っているようだ。些か退屈そうに頬杖を付いている。
    「珍しいじゃねえか、お前そういうの好きだっけ」
    「押し付けられただけだ。退屈で仕方ない」
     ため息交じりにそう言われても、デカラビアを外に出してやることもできない。こうして時折話していれば多少の情も沸くものの、それでも監視は仕方ない処置だ。
    「まあ、出先で面白え本でも見つけたら持ってきてやるからよ」
     ふん、と鼻を鳴らすデカラビアは、小さく「余計な世話を焼くな」と言ったものの要らないとは口にしない。その様子にずいぶんと丸くなったものだと頬を緩めつつ、丸い頭をぐしゃぐしゃとかき回した。
    「おい、やめろ!」
    「元気そうなら別にいいんだよ、じゃあな」
     早々に払い落とされた手を、ひらひらと振る。監視役はこの部屋には何人かいるようだし、事欠かないだろう。ひとまずは様子を見に来るという用事は果たしたし、遅めの昼食でもありつけないかと部屋を出ようとする。が、その後ろからかかる声があった。
    「待て」
     まるで犬を呼び止めるようだと思いながらも、足を止める。
    「どうした? お前も腹でも減ったのかよ」
     自分で呼び止めた癖に不機嫌そうな面持ちのデカラビアを見下ろすと、はく、と一瞬小さな口が逡巡するように開いた。
    「夜もいるのか」
     抑えた声だった。その意味合いを察して、少し苦笑し言葉を返す。
    「ああ、いるぜ」
    「そうか」
     グラシャラボラスが肯定すると、満足したのか追い払うように手で払う仕草をされた。勝手なことだと、ぶつくさ言いながら今度こそ部屋を後にする。

     デカラビアはそれを横目に見送って、深いため息を吐いた。

    *

     夜半の冷えた廊下を、ひたひたと歩く。寝衣の上に適当なローブを羽織って、デカラビアは目的の部屋の前で足を止めた。仮にも反逆を企んだものが夜に一人で出歩いていれば問題になりそうなものだが、見回りの者に見つかる度にグラシャラボラスの元に行くと答えていたらとうとう何も言われなくなった。忌々しいことである。
     ノックはせずに、ドアノブに手を伸ばした。難なくドアは開いて、薄明りの中で人影がぼんやりと顔を上げた。
    「よう。お前も物好きっつーか懲りねえっつーか…」
    「言い出したのはお前だぞ」
     髪を下ろした姿も、もう見慣れてしまった。グラシャラボラスが少し眠たげな目をして、一人用の寝台に空けられたスペースをとんとんと叩く。デカラビアが慇懃にそこに乗り上げると、グラシャラボラスが再び頭を枕に沈めた。
     迎えるように掛け布団を持ち上げられるものだから、そこに潜り込む。こんなはずではなかった、と横になりながらデカラビアは拳に力を込めた。

     少し前のことを思い出す。退屈を持て余して、ふと魔が差したのだ。あんまりにも自分を構うものだから、懸想でもしているのかとかまをかけた。そして軽口のつもりで、泣いて乞うなら抱かれてやってもいいと言った。
     だが、あろうことにグラシャラボラスは驚きはしたものの、ガキを抱く気はないと切り捨てた。それがデカラビアに火を付けた。とうに十八を超えた己に対するガキという評価を覆したかったはずが、押し問答を繰り返すうちにこんな捻じ曲がった形に収束したのだ。
     分かった分かったと全然理解していない顔で、人肌が恋しいなら添い寝してやるからとほざいたあの時のグラシャラボラスをデカラビアが頭の中で何度蹴飛ばしたか最早覚えていない。なんなら現実でもたまに蹴り上げている。

     グラシャラボラスは無防備に横たわって、目を閉じていた。とん、とん、と規則的なリズムで、デカラビアに回された手が背中を叩く。子供じゃないと何度言っても、眠るまでやめないものだから諦めた。
     律儀に夜に押し掛ける自分も自分だと思わないわけでもないが、年齢だけでガキと思われているならまだしも恐らくこの男はそうではないのだ。その根本を掴み、認識を変えさせる。その先に何が待っているというわけでもないが、たんに気に食わない。
    晒された首にちらりと視線を向ける。監視係の風上にも置けないと、近頃のグラシャラボラスに向けられる揶揄いの言葉を思い出した。その気はなくとも灯りの消された寝台で横になっていれば、いやでも眠気がやってくる。だが、一応は性交渉のつもりでけしかけた身だというのに、この生温さはいただけない。
     だから、その喉に獣のように噛みついた。引き攣った声と共に、グラシャラボラスの目が見開かれる。デカラビアは口を離して、唇の端についた血を舌で舐めとった。
    「いってえな、何すんだよ」
     顔を歪め、ぺたりとグラシャラボラスは自身の首に触れる。その指の隙間から、デカラビアが付けた凹凸が見え隠れした。
    「クックック…。お前は子供をあやしてるつもりだったようだが、それが間違いだとそろそろ教えてやろうと思ってな」
     満足げに笑みすら浮かべるデカラビアに、グラシャラボラスは苦虫を噛み潰したような顔をする。
    「はぁー、だからって噛みつくこたあねえだろうが…。いってて」
    「俺はそもそも抱かせてやってもいいと言ったんだ。それを取り違えたのはお前だろう」
     首を擦る様子に溜飲が下がり、デカラビアはグラシャラボラスに背を向けるように体勢を変えた。
    「つったってよお、抱けねえもんを抱けるとは言えねえだろうが」
    「それはお前がつまらんヴィータの常識なんぞに囚われているからだ」
    「お前も今はヴィータだろうがよ…」
     言い合いは平行線だ。
    「つーか、ガキだろうがそうじゃなかろうが、覚悟もできてねえやつは抱けねえだろ」
     聞き捨てならない言葉に、閉じていた目を開く。
    「どういう意味だ」
     そう言って、振り返ろうとすると肩を掴まれた。視界がひっくり返り、はっと気付いた時にはデカラビアは寝台に仰向けになっている。眼前には、天井を背景にこちらを見下ろすグラシャラボラスの姿があった。グラシャラボラスの長い髪がデカラビアの首元を撫で、肩がぴくりと揺れる。
     何をする気だ、と問いかける言葉は、困ったような顔をするグラシャラボラスの口に吸い込まれて消えた。咄嗟にグラシャラボラスの肩を押すものの、びくともしない。舌がデカラビアの口内に潜り込んで、ぐちゅりと舌同士を擦りつけられる。びりりと、頭の片隅が痺れて、思考がままならない。唇を食まれる度に、ぞくぞくと背筋が戦慄いた。
     やっと解放された瞬間、ふはっと息を吸い込んだ。視界がちかちかと明滅している錯覚に襲われる。無体を働いたグラシャラボラスを睨みつけると、悪びれる様子もなくデカラビアの上から退いた。
    「分かってねえなら言っておくけどよ、抱くっつうならこれじゃすまねえぞ」
     その言葉に思わず目を見開くと、グラシャラボラスが呆れたように笑う。
    「だから言ったろ。ほら大人しく寝とけって」
    「言われなくともそれくらい分かってる!」
     どうだかと言ったグラシャラボラスは、またこちらに布団を掛けて今度こそ眠るつもりのようだ。気に入らない。ぐらぐらと煮えくり返る衝動のまま、跳ね起きるようにしてグラシャラボラスの胸倉を掴む。
    「お前が言ったんだろう!」
     デカラビアの行動に、グラシャラボラスは目を細めた。その態度にも、一層腹が立つ。
    「お前が、誰でもいいとそんな態度では駄目だと言った癖に。だからお前なら抱かれてもいいと、わざわざ言ったんだろうが!」
     声を荒げる度に、何をしているんだと冷静な己が囁いた。そんなことは、デカラビア自身が一番知りたかった。グラシャラボラスの顔も見ていられずに、視線を落として俯く。時折恐ろしくも思う、この男の目はこういう時ばかり相手を見透かすような目をすることがあった。
    「つ、伝わんねえよ。あんな言い方じゃあよぉ!」
     だから咄嗟に反応できなかったのだ。下から伸ばされて、自分を抱きしめて引き寄せようとするその腕に。
     あっという間に引きずり込まれて、ぎゅうぎゅうと抱き込まれるように絡めとられた。暑苦しいと押し退けようとも、遠慮のない力にデカラビアの細腕ではどうにも及ばない。
    「は、離せ暑苦しい!」
     胸板を何度か拳で叩くと、やっとその力が緩んだ。グラシャラボラスの顔はどこかゆるゆると目尻が下がっていて、口元は緩んでいる。
    「そうならそうと最初から言えよ」
     どこか嬉しそうな声色で、額に柔らかな感触が降った。
    「うるさい、だらしない顔を押し付けるな!」
     つまらない、退屈な物語のような触れ合いがしたいわけではない。熱を持つ顔を隠すために、今度こそグラシャラボラスに背を向けて掛け布団を被った。
     はいはいとグラシャラボラスが丸まるデカラビアに腕を回したが、それは振り払われなかった。

     暫くして、デカラビアが結局抱かないのかと吼え、見張り役に部屋の扉を叩かれるまで後少し。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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