ナポリタン 失恋の心を癒すのは、新しい恋に限る。
恋愛の最後なんてみっともなくて辛いだけだ。いかなる形の別れであっても、心の奥に隠してあったものが剥き出しになる。なにより、自分の醜さが露呈する。恋は前向きで美しいなんて嘘だ。エゴと我が侭に塗れた、手に負えない暴走する感情がコアにあるのだから。
本当に手に負えない、と思ったのだ。
あの男と来たら、紳士な振りをして排他的で、優しい顔をして実際は線を引く。こちらの覚悟なんて知ったことじゃないとばかりに、お前が大事なんだ、と言いながら本心を巧みに隠していく。
自分という存在が必要だろう、と傲慢に構えながら、心の底で相手の心を推量しては怯えていた。か弱い乙女ではないのだから、と本音を飲み込みながら笑顔で接するのは辛く、会う度になにかに罅が入る音が脳の中で響いていた。話してはいけないと頑なに思い込むことで、関係すらも硬化していくことからは目を背け続けた
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