見ればわかる「おはよう」
まだ瞼が半分以上落ちたまま、顎に手を当て、親指の腹で顎先を擦りながら遼がリビングダイニングへ入ってきた。
「お…よぅ」
声を掛けたキッチンに立つ僕の元までふらふらとやってきて、首を傾けて[[rb:顳顬 > こめかみ]]へ唇を寄せる。ふふ。寝起きでうまく身体が動かないんだね。おはようって言えてないよ。
遼は昨晩遅くまで作業していて、ベッドへ入ってきたのは明け方近かったんじゃないかな。まだ眠いだろうに、出勤する僕に合わせて起きてきた。
口へのキスは、顔を洗ってうがいをしてから。遼はマテの仔犬…いや、大型犬か…のような目で僕の顔を覗き込んで、それから僕の手元を見た。卵を割り入れたばかりで指先が汚れているから、口元の涎跡を拭ってあげられない、ごめんね?
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