へし切長谷部より手紙が届いていますの没案 主はお考えになったことがありますか。
俺と婚礼の儀を結び、数年、数十年後、いつか俺という存在が、貴女の中で新鮮味を失い、色褪せた存在になってしまうかもしれないことを。
ねえ主。その時を思うと、俺はたまらないのです。胸が締め付けられて、足元から崩れ落ちるようなそんな気持ちになるのです。
主はお優しいからきっとそんなことはないとおっしゃるでしょう。ですが俺には分かるのです。
修行に出たことで、俺は一つ大事なことから目を逸らしていたことに、気が付いたのです。人はいずれ物に飽き、気まぐれに物を捨てるものだと。それをあの男は、信長は俺に教えてくれました。どんな名刀であっても、愛刀であっても、いえ、大事なものだからこそ手放さねばならぬ日が来る。
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