59 アル空「眠れないのかい?」
「ん……ごめん」
「謝ることはないよ。……何か、話でもしていようか」
「いいの? アルベド、朝早いって」
「キミが眠れないまま夜を過ごすことの方が気になってしまうから。それに、確かに起床は早いけれど、するべきことは午前中で終わる予定だから。ボクのことは気にしないで」
「そう、なの? ……あのさ、じゃあ少し話しててもいい?」
「もちろん。どんなことを話そうか?」
「そうだな……パイモンが最近、ほんとに食欲旺盛なんだ。たくさん食べるって健康的だろ、って本人は言うんだけど、モラの減りが早くて」
「ふふ。そういえば今日も、レザーと互角と思えるくらい豪快に食べていたね」
「そうなんだよ。それがしょっちゅうでさ。しかもやけに高級そうなものを選ぶんだよねえ……」
「舌が肥えているのかもね? キミと旅をして、キミが作る料理や訪れた国々の伝統料理を食べるうちに、味を覚えていってるのかも。その気になれば料理人になれるんじゃないかな?」
「ええ〜? 食べる専門だって言い張る未来しか見えないなぁ」
「それなら、グルメレポーターになるとか? 書籍にするかチラシのようにばら撒くかをして宣伝すれば、モラが集まるかも?」
「なるほど……でもパイモン、料理に対してはだいたい美味しいって言うからな……詳細なんて書けるかな?」
「そこはキミがサポートして、お店の料理を宣伝しつつ、自分たちの名前も覚えてもらえばいいんじゃないかな」
「んー、たしかにそれもアリかも……ふふ、グルメレポーターかあ。俺もサポートしながら食べていくから、アルベドの好きそうなものはちゃんとピックアップしておくね」
「それは楽しみだな。キミが選んでくれるなら、ボクは必ず美味しいって言うよ」
「まだ食べてもないのに? 知らない料理でも?」
「キミが選んでくれるということだけで、味や好みは保証されてるようなものだからね」
「うーん、信頼が嬉しいような、プレッシャーのような」
「すまない、そんなつもりはなかったのだけど。……でもいつか、そんな未来があったら楽しそうだね」
「……うん。そうだね。……ん、ごめん、なんか眠くなってきた」
「いいよ、ゆっくりおやすみ」
「ん、……アルベド」
「なんだい?」
「ありがとう。おやすみ」
「……ああ、おやすみ。空」