悠スフィ オズフィガ 新作展示 『雷』 俺はオズの機嫌を空模様ではかるのが、結構好きだった。
あれはいつ頃だっただろうか。よく覚えていないが世界征服真っただ中だったように思う。結構長いこと抵抗していた街を一つ落として、俺は上機嫌だった。酒でも飲もうか、なんて話になって、オズと二人で酒を飲んでいたのだ。
◇◇◇
「あそこが落ちればあの辺一帯はもう手に入ったも同然だね」
「そうか」
「いや~、いい達成感」
「そうだな」
相槌しか返ってこないが、大昔を考えれば相槌が返せるようになっただけでも成長したというものだ。俺は機嫌良くグラスを傾けていく。今日調達してきた高い酒を、一本いくらの安酒のように空ける。
「久しぶりに手応えのあるところだったね」
「ああ」
「最近簡単すぎてつまんなかったし、いい刺激だったな」
「別に……私は刺激を求めてはいない」
「そう? まあ仕事に対するやりがいとか、そういう話だよ」
「……? そうか」
こいつ、絶対今のわかってないな。まあ、オズなんて、俺の話三割もわかっているか怪しいものだ。……さすがに馬鹿にしすぎか?
そうやって、二人きりで酒を酌み交わす。オズは案外、酒を飲むのは嫌いじゃない。別に陽気になったり饒舌になったりするわけではないのだが、なんとなく雰囲気が丸くなる。俺はその空気を醸しているオズのことはそこそこに気に入っていた。多分、双子にも見せたことはない。俺だけが知っているオズの姿だ。俺はその「俺だけ」という部分がかなり気に入っている。それってなんだか特別な感じがして心地が良い。
しばらくして、俺もほろ酔い、いい気分。相変わらず俺が喋ってオズが相槌を打つだけだけど。なんだかふわふわして来て俺は、少し人肌恋しくなる。俺は人の体温と言うものが割と好きだ。触れたところから、何か見えないものが摂取できる気がする。
俺はうっすらと笑みを浮かべながら、オズの膝に正面から乗っかってやる。余った足をひじ掛けにのっけて首に腕を回すと、オズが硬直しているのがわかる。俺は面白くなってくっくと肩を震わせる。見たことない顔をしている。
「……何をしている」
「んー、くっついてる」
「なぜ」
「……あったかいから?」
「…………そうか」
あーあ、考えることを放棄してるよ。あはは、おもしろい。
きっと俺も酔っているのだろう。俺はにんまり笑うと勢いに任せて顔を寄せる。
――ちゅ。
「…………」
「…………」
数拍。無言で顔を見合わせる。
数舜。鳴り響く轟音。
――ドォン、バリバリ!
「あっはははは」
「…………笑うな」
それは、雷に打たれる……いや、雷を打たせるほどの衝撃だったらしい。
俺がオズと初めてキスした日の記憶。