俺とお前とカステラと しゅんしゅんと湯気を上げて沸騰したお湯を、きっちり八分目まで静かに湯呑へ注ぐ。急須にはこの前気に入ったようだった茶葉を一匙。
そこへ湯呑に注いでいたお湯をゆっくりと移す。器が温もり茶が冷めにくくなる上、沸騰したばかりでは熱過ぎるお湯が、茶葉が綻ぶのに最適な温度まで程よく冷まされるのだ。
芳醇な香りが立ち上るのを待って、再度湯呑へ。
鮮やかな緑色の中に茶柱が立っているのを見つけ、朱の盆はにひ、と嬉しそうに笑みを浮かべた。
茶請けの大福と一緒にお盆へ乗せて運ぶ。無論、向かう先はぬらりひょんの居室だ。
「お館様、お茶が入りました! 少しご休憩を」
開け放たれたままの縁側からひょこりと顔を覗かせてそう告げれば、何か書き物をしていたらしいぬらりひょんはふい、とこちらを振り返った。
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