日記日記△月〇日
ねぇ、丸っこいものを連れて歩くのってはやってるの?
今日見た緑の髪のやったらでっかい先輩、肩にずらっとちっちゃい丸いものを乗っけて歩いててマジでビビったんだけど。
隣にいた同じ顔の先輩、どうも何かを感じてるらしくて、乗ってる方の肩をいやそうにチラチラ見てた。
きのこ臭い!!って叫んでたけど、あれ、いわゆる「山のモノ」だよね……?
△月●日
この間の肩に乗せてない方の先輩が一人でいるとこを見かけたんだけど、なんか歩くたびに水の音がして、あとすんごい潮のにおいがした。
よくよく見たら、なんか昔はやった映画の神様が歩いてくるシーンみたいに歩くたびに足元にじわじわと海が広がってて三度見くらいした。
その海の中から、次々に手が生えてきてて、うわぁ、って。
緑色っぽい爪の長い手にはひれみたいのがあって、あ、人間の手じゃないなってのはわかったけど、みんなどこかかけてたりへしゃげたりしてて、あの先輩ほんと何やらかしたのこっわ。
できる限りあの二人には近づかんとこ。
あ、双子なんだってね。
え、双子……ん??
△月×日
双子が一緒に歩いてるとこに遭遇、っていうか向こうから近づいてきて回避できなかったでござる。
よく見ると山の方は緑が濃くて海の方は青が濃いんだね。目の色は左右反対。見た目は綺麗なんだけどなぁ。
しっかし海と山がお互い覇権争いをしてるっぽいんだけど何を見せられてるんだ私は。
手が出てこようとすると白いのが踏みつぶしに行くし、白いのがもう一人に近づくと手が追い払ってるし。
まぁ、お互いそうやってけん制しあってる間はまだ平和なのかな……。
とりあえず、グリムには「あの二人に近づいたら二度と寮には入れない。万が一何か約束をしてきたら二度と顔も見たくない」ときっちりしっかりくぎを刺しておいた。
あの二人はヤバいんだ、とこんこんと言って聞かせて泣くまで許さなかったからわかってくれたと信じている。
△月△日
グリムが肩に白いのを、尻尾に青っぽい手をくっつけて帰ってきたから蹴り出した。
<追記>
約束はしてない、勝手に近づいてきて契約を勧められたけど一度子分と相談すると言って出てきた、と扉に縋り付いて訴えているお猫様の余りの哀れっぽさに、仕方なくツナ缶だけドアの外に出して話を聞いてやった。
案の定、何やらかかわってこようとしている模様。
全力で海除け山除けをする羽目になって熱が出た。
自然を相手にするのは骨が折れるんだよ……頭くらくらする……。
△月◇日
❤と♠にグリムと同じものがくっついてたから二度と私に関わるなと絶交宣言をしてきた。
悪いけど私は自分で対処できないものに関わりたいとは思えないんだよね。
△月◆日
ハーツの先輩三人が二人を締め上げて引きずってきて、寮の入り口で頭を下げられた。
なんでも、やばい取引に手を出そうとしてて、っていうか実際ちょっと出して大変なことになりかけてたらしい。
去年同じような騒ぎがあって、一応注意してたんだとか。
先人の忠告は素直に聞きなさいよおバカさんたち。
△月□日
普通に試験を受けさせようとしてきた誘拐犯氏に全力で抗議して、担任と主任っぽい立ち位置の先生と一緒に面談タイム。
幼稚園児ですら知っている当たり前の名称すらまともに知らない私と猫たんに、いったい何を書かせようとしてるんだあんた達は。
きちんと配慮できないのならいつだって生徒はやめていいんだけど。
グリムは生徒でいたがってる? 少なくとも私にそれ、関係あります?
最終的に専用の問題用紙を用意してもらえることになった。
成績に反映できるかわからない、とか嫌味っぽく言われたけど、そも今どれだけこの世界を理解してるかを把握するところからでしょうが。ほんと、あの羽根毟ってやりたい。
とりあえず明日から3日間、歩くたび靴の中に何か固いものが入り込むおまじないをしておいた。次は水虫になるおまじないEXにするからな。
△月■日
海と山を左右に引き連れて、なんか黒い塊っぽい人が声をかけてきた。
あの人、普通に生活できてる? 大丈夫?
人の悪意とかその辺を芯にして、物凄い勢いで周りの悪いものを寄せ集めてるんだよね、あれ。
なんかものっそいいっぱい語ってくれたっぽいけど、いろんな声が混ざりすぎててなに言ってるかわかんなかった。
海と山はあの黒い人の対処に一生懸命で私らの方を見向きもしなかったし、いやマジでやばすぎでしょ。
こわ。近づかんとこ。
▲月〇日
学園内にイソギンチャクが大量発生
何あれウケるwwwww
何とかしてほしいって誘拐犯氏が言いに来たけど、私には無理デスで押し通した。
水虫で苦しんでもらおうね。
▲月●日
黒い塊さんが何やら一生懸命私に接触を試みてるっぽい。
怖すぎるので全力で悪意除けのお守りを増産した。
それを持ってるとあの塊さんごと近づいてこなくなるんだからよっぽどだと思う。
▲月×日
今日、寮の入り口に白くて丸いのがずらっとながんでゆらゆらしてて本気でビビった。
しかも順番に頭を下げてくるもんだからウェーブみたいになってたし。ちょっとかわいいと思ったのは秘密。
いうこときかないとどいてくれそうになかったので仕方なくついていったら、海の腕に囲まれた塊さんがいて、何、和解したの?
もう何も考えずにとにかく黒いのを吹き飛ばしたよ。
中からやたら綺麗な男の人が出てきてびっくりしたけど、目の下くまで真っ黒だし顔色悪すぎだしで、とにかく緊急の時にって教わっていた担任の電話番号にエマージェンシーコールした。
その後意識が吹き飛んで目が覚めたら保健室にいたから、塊さん……銀色の彼がどうなったかはわかんない。
もう二度とごめんですわ。
▲月△日
海と山と銀色が三人そろって寮の前にいたので回れ右した。
裏口から逃げたけどめっちゃ追いかけられてマジで狩られるかと思った。
お願いだから放っておいてください……。
<追記>
グリムと一緒に美味しいご飯をご馳走になった。
これで貸し借りなしです、って言われたけど、もうそれでいいよ。
今日も海と山は元気に喧嘩してたし、平和ってことでしょ把握。
▲月◇日
あの二人、ウツボの人魚なんだって。
元は兄弟がいっぱいいたんですよ、って、あ(察し)ってなった。なるほど把握。
で、なんで山???