ジュンギのおやつ帰宅ラッシュのタイミングとぶつかる形で電車に乗ってしまった春日が、うんざりした足取りでサバイバーへ辿り着き、扉を開けると、そこには珍しい先客がいた。
ハン・ジュンギだ。
「お、珍しいな。久々じゃねえか、ハン・ジュンギ」
カウンターの端の席を陣取ってグラスを傾ける姿が、さすがに様になっている。
端正な横顔と、誰もが似合う訳ではない銀髪。
真っ黒なコートの下には体脂肪率一桁の立派な体躯が隠されていて、ゆとりのあるそのコートの中で背筋がピンと伸ばされているのがわかる。
声をかけた春日に気づくと、切れ長で涼やかな目元がゆっくりと細められ、笑みの形をつくる。
作りもののような男だと最初は思ったが、今ではだいぶ色々な表情を見せてくれるようになった。
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