無人島 没SS(姫視点)「ぬぁー……!」
栖夜は組んだ両手を空に向け、思いっきり伸びをした。
明るい陽射しと心地よい海風に吹かれていると、些細な悩みなど、空の彼方へ飛んで行ってしまう。渚をでびあくまと歩きながら、栖夜は軽やかな潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。
目の前にはエメラルドグリーンにきらめく海が広がっている。碧く透き通った波が寄せては砕ける様、繊細な泡のレースが引いていく様は、一つとして同じ形を成さず、その力強くも儚い美はずっと見つめても見飽きることがない。
栖夜は麦わら帽子の鍔をついと持ち上げ、さりげない仕草で後ろを振り返った。岩場の岬の突端に、釣り糸を垂らす人影がある。誰あろうレオナールだ。角付きのサングラスは麦わら帽子を被るには邪魔らしく、鍔の上に乗せられている。長い尻尾はリラックスした様子で、左右に揺ったりと揺れていた。のんびりと風に吹かれならがら糸を垂らしている様は、なかなか堂に入っている。
1360