空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:21 唯一部活も授業もない日曜の朝、常ならば空閑の腕にすっぽりと抱き寄せられている筈の体温は既になく。空閑はその違和感に寝ぼけたまま、幾度か深い海と同じ色をした瞳を瞬かせる。
腕から消えた体温を探すようにのそりと起き上がった空閑は、窓際のデスクに腰掛け文庫本を開いている男の姿を視界へと入れた。
「起きたか」
いつもながらに短い言葉で空閑の起床を確かめた汐見の声に、半分以上寝惚けたままで空閑は笑みを彼へと向ける。
「早いねぇ、どしたの? いつもならまだ寝てるじゃん」
「寝てるっつか潰されてんだけどな、お前に」
幾分か不貞腐れた声で返ってきた言葉に空閑は眉を下げ、汐見の機嫌を伺うように言葉を探す。
「だって奥まで許してくれるの土曜の夜だけじゃん……嫌だった?」
1009