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    taiso_huku

    すけべな鉢雷など

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    思い出さないでほしい

    #鉢雷

    チュンチュン…とスズメの鳴く声で雷蔵は目が覚めた。そう、朝チュンである。
    寝起きのぼうっとした頭でしばらく虚空を見つめた後、だんだんと意識が覚醒して雷蔵は体を起こした。

    「うぅん……」

    すぐ隣から気の抜けた唸り声が聞こえて視線をやると、同じ布団の中で自分と同じ顔をした男が転がっていた。肩から上しか見えないが、服は着ていない。その姿を見た瞬間、雷蔵は昨夜の記憶がブワッと一気に蘇った。
    思い出すのは熱、熱、熱。情熱的な愛情と、人肌の温もり、口付けの熱い吐息、初心な雷蔵にはあまりに刺激的な熱ばかりだ。恋人になって初めて体を重ねた夜。同じ顔なのに、同じ顔とは思えないような意地悪な顔をする男。その小憎らしい顔に胸が高鳴るのだから僕はもう末期だ。
    三郎は無防備にすうすうと寝息を立てている。今僕が面を外したら素顔なんて簡単に見られてしまうんじゃないだろうか。だって昨夜の自分は全て暴かれたのに、僕だけ三郎の素顔も知らないなんてのは卑怯だ。それでも寝ている間に無理矢理なんてことはしないけれども。
    隣のお寝坊さんを起こさないように静かに布団から出ると、自分が褌をつけていないことに気が付いた。そういえば寝る前に寝巻きを一枚羽織っただけだった。誰かに見られる前にと、慌てて近くに脱ぎ散らかされた褌を手に取る…と、三郎の名前。うわあ、三郎も履いてないのか!と改めて認識すると、この布団の下で全裸でいる三郎の姿を想像してしまう。冷めていた熱がまた上がり、顔が火照る。
    雷蔵は赤い顔のまま今度こそ自分の褌を手に取り身に付けた。そして衣服を着ようと寝巻きを脱いだところを、後ろから強い力で引っ張られた。

    「うわっ!」
    「まだ起きるな。もうちょっとだけこのまま」

    いつの間にか起きていた三郎が、寝起きで半目のまま雷蔵をぎゅっと抱き寄せる。素肌同士が触れ合い、その温かさがまた昨夜の情事の生々しい感覚を思い出させた。ドキドキと心臓が脈打つ。ああもう、こんなに意識してるところ、三郎にバレたら絶対揶揄われるのに。
    心を落ち着けようとすればするほど静かになってしまって、後ろに当たる三郎の吐息にすら反応してしまう。恥ずかしくて早く服を着てしまいたいのに、この温もりと静けさが心地よくてなんだか離れるのが名残惜しくもある。この状況をもし他の誰かに見られたら、なんの言い逃れもできない。
    いろんな感情が押し寄せたが、脱いだままでは風邪をひくかも!という頭が勝ち雷蔵はどうにか三郎の抱擁から抜け出した。

    「ほら、起きるなら服着ろよ三郎」
    「うーん、仕方ないなあ」

    三郎は残念そうな声をあげて、ようやく辺りに散らばった衣服を集め始めた。
    その顔はまだ眠そうだが、欠伸をしながらも目は冴えてきたようで手際よく服を着て整えていく。雷蔵も慌てて服を着ると、もぬけの殻になった布団に目をやった。

    「布団…洗って干すよね?」
    「ん?ああ、そうだなあ。雷蔵、結構出したから」
    「! …っ、ご、ごめん…」

    三郎がなんでもないことのように発した言葉に、また雷蔵は過剰に反応してしまう。そうだよなぁ、確かに布団を汚したのはほとんど僕だ。だって三郎は確か、………僕の…なか、に…………。
    その反応を見て三郎はいつも通り楽しそうに笑った。

    「出させたのは俺なんだから謝るこたないだろ。真っ赤な顔しちゃって、思い出した?」
    「…そりゃ、そんなこと言われたら…」
    「俺も鮮明に覚えてる。雷蔵がどこを触ったら喜んで、どんな声を出したのか、どれほど可愛くて色っぽかったか…」
    「おおお思い出さなくていいからッ!!」

    雷蔵が慌てて耳を塞ぐ。羞恥で涙目になった雷蔵が、遊んでるだろ!と言わんばかりに三郎を睨むと、三郎はにっと笑った。
    しかしそれはいつもの憎たらしい顔ではなく、心の底から嬉しそうな、なんとも優しい笑顔で。
    一瞬ドキッと見惚れた隙に、三郎が雷蔵の唇に触れた。舌を入れられると、驚いて身体が強張る。雷蔵はぎゅっと目を瞑って三郎の舌の動きに集中した。水音が頭に響いてクラクラする。息継ぎのタイミングがよくわからなくて、三郎の口が離れてから、ようやく水から上がるようにプハッと息を吸った。

    「苦しいってば…。昨日も言っただろ、長いって」
    「そうだっけ」
    「覚えてないのか?」
    「雷蔵が思い出すなといったんじゃないか」
    「それは思い出してくれ」
    「そうだな。言われたよ。長くて苦しいけど、気持ちよくてドキドキするって」
    「………そ、そんなこと、言ったっけ………。やっぱり、思い出さなくて、いい」
    「おいおい、忙しないな」

    結局、一日中事あるごとに昨夜を思い出して慌ててしまったのは雷蔵の方だったとか。もちろん三郎は、思い出しても態度に出さなかっただけなのだが。
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