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    四 季

    @fourseasongs

    大神、FF6、FF9、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが好きな人です。

    boothでブレワイに因んだ柄のブックカバー配布中:https://shiki-mochi.booth.pm/

    今のところほぼブレワイリンゼルしかない支部:https://www.pixiv.net/users/63517830

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    四 季

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    百年前リンゼル(割とリン→ゼル風味)。
     リンクに、「姫様は自分にとって月のようなひと」と言わせたかっただけの読み物。

     (以下、長い蛇足)
     最近某番組で「星は自分を燃やしながら輝く存在」というのを聞いて(「地○の星」に対するコメント)、太陽も同じ恒星で、その輝いている太陽が実は苦悩多い存在だと気づいたからこそ、姫はリンクにとって特別な存在になったんだろうなあと思いながら書きました。

    #リンゼル
    zelink
    #ブレワイ
    brawley
    #ブレスオブザワイルド
    breathOfTheWild
    #ゼルダ姫
    princessZelda

    THE SUN AND THE MOON「姫様は自分にとって、空に浮かぶあの月のようなひとです」

     ──リンクのその言葉に、私は黙って彼の視線のその先にある、夜空に浮かぶ月を見上げた。

    【THE SUN AND THE MOON】

     ──王妃様はさながら太陽、姫様はまるで月のようですね。

     幼い頃、周囲からそんな言葉をかけられるたび、大好きな母が褒められているのだと感じて、嬉しかったのを覚えている。
     自分にとっての母は、優しく、時に厳しい、大好きな母親であると同時に、その存在そのものがハイラルに安寧をもたらしてくれる、尊い存在だった。
     ハイラルから厄災の影が消えて久しいが、それでも民たちは母を、ハイラルを守る姫巫女として敬い、慕ってくれた。そして、母とともにハイラルの各地に赴けば、誰もがその血筋を、そして「ゼルダ」という母のその名を褒め称えた。
     ──ゼルダ。
     王家の姫・ゼルダは、ハイラルの全てをあまねく照らす太陽のような存在だ。そして、母が受け継いだ血筋と名は、常にハイラルとともにあり、ハイラルを守り続けてきた。そして、自分もそれに連なる聖なる血と名を受け継いでいる。
     だから、幼い頃は、母を太陽のようだと褒め称えるその言葉を、そして太陽の子である月に自分をなぞらえるその言葉を聞くたび、とても誇らしく、嬉しかった。
     けれど長じるにつれ、その言葉は、別の意味を帯びて自分の耳に届くようになった。
     月が太陽の光を受けて輝くように、母から受け継いだ血と、名前しか持たない姫。
     自らの光で輝くことができず、借り物の威光しか持たない姫。それがあの「ゼルダ」なのだ、と。

      ※

     母を亡くしてから、空に煌々と輝く月を見上げるたびに、私はそんな微かに苦い記憶を思い出すようになっていた。
     だが、この日、月を見上げている私の心は、不思議と凪いでいた。つい先日、父であるハイラル王から、遺物研究の禁止を厳に言い渡されているにもかかわらず。
     清かな光を放つ月を茫然と見上げている私の背後で、人が身じろぎをする気配がした。
    「姫様。
     そろそろ流れ星が現れ始める時間です」
     私付の騎士であるリンクが、空を見上げて月の昇る角度を確かめながらそう告げた。
     私が城で父から遺物研究の禁止を命じられたとき、彼は私の後ろで父に対して跪き、恭順の意を示すように黙って首を垂れていた。彼は私付の騎士ではあるが、彼の主君は王である私の父なので、それは致し方ない。
     だが、修行のため女神ゆかりの地へ参拝に赴こうとしている私に、リンクは至極当然のように、私がこれまで遺物研究に行くたび携帯していた道具一式を差し出した。聞けば、わざわざ執政補佐官のインパに申し付けて、研究室に置いてあったそれらの道具を持ってきてもらったというのだ。
     父に見つかれば大目玉では済まされない。だが、どこか開き直ったようですらある彼の堂々とした態度に、私は思わず小さく笑ってしまった。それと同時に、自らの危険を顧みずに私を護ってくれようとする彼の振る舞いに、ひどく心が震えた。カラカラバザールで、イーガ団から彼が私を護ってくれたときのように。
     私が彼と打ち解けるきっかけとなったあのカラカラバザールでの出来事を思い浮かべるたび、あの日のゲルド地方特有の熱気を纏った砂舞う空気や強い日差し、そして、恐怖とは別の理由で高鳴る胸の鼓動を、つい先ほど起きたことのように、私は鮮明に思い出す。おそらく、これから何年時が流れても。それは不思議な確信だった。
    「姫様。
     出発します」
     流れ星が空に弧を描いて落ちる先を見据えたリンクの言葉に、私は頷いた。
    「はい。先導してください」
    「承知」
     私は馬に乗り、月の浮かぶ方角に向かって走り出すリンクの背中を見つめた。
     それまで私は、姫として、また彼の主君として、つねに彼の前を歩いて来た。彼は私の護衛かつ従者であり、いつも私の三歩後ろを歩いていた。
     彼に限らず、私がハイラルの姫である限り、ハイラルの民はみな後ろを歩く。私はハイラルを導く姫であり、ハイラルを守る剣であり、盾である。
     だから、誰かの背中をこうしてまじまじ見つめたことはほとんどなかったということに、今さらながらに気づく。
     私とさほど背丈の変わらない彼の背中が、これほどまでに力強く、頼もしいのだということも。

      ※   ※

     私とリンクはハイラル平原の東側、流れ星の落下地点に来ていた。離れた場所からでも見える光の柱を放っていた星のかけらだが、不思議なことに、側に近づくとその光の柱は消えてしまう。
     隕石と聞いて想像していたよりもずっと小さい星のかけらを、私は恐る恐る手に取った。熱くもなければ冷たくもない。軽くもないし重くもない。不思議な物体だった。
     私はリンクの方を振り向き、思わず笑顔を浮かべた。
    「貴方のお陰で手に入りました。助かりました」
     星のかけらは、古代遺物の修復と調査に欠かせない。なぜなら星のかけらは、古代遺物で用いられていたことが突き止められた、数少ない素材だったからだ。古代のネジやバネは、現代の技術では再現することが不可能だが、壊れたガーディアンから得られたそれらの部品と星のかけらを組み合わせることで、ガーディアン同等の力を持つ武器を作製することも可能だという。
     表立って古代遺物の研究をすれば、私だけでなくリンクまでお咎めを受けるだろう。だから、私は勇気の泉や力の泉、時の神殿への礼拝の帰りに、こうして密かに素材集めをしたり、休憩と称して祠に立ち寄ることにした。そしてそれを伝えると、リンクはその予定に合った素材集めを提案してくれるようになった──例えば、今日のように、流れ星が多く降る日は、星のかけらの素材を集めをしてはどうか、といった具合に。そしてそれに合わせて、私が礼拝場所の選定をする。
     星のかけらを一つ見つけたが、その後も私たちは何度か移動して、流れ星を追いかけた。私よりも遥かに視力と勘の良いリンクは、流れ星だけでなく、希少鉱床などの希少素材を見つけるのにも長けていて、私は彼の多才ぶりに驚かされた。ダイヤモンドやルビー、サファイアは、宝石としても価値が高いが、防具などの素材としても欠かせないのだ。それに、こうして二人で素材を見つけていると、幼い頃、知らない花や石を見つけたときの喜びに似た感情がこみ上げてきて、このままこんな時間がもっと続けば良いのにとさえ思ってしまう。
     そうして流れ星を追いかけているうちに、月が少しずつ西に傾き、東の地平線を茜色に染めながら、太陽が昇ってきた。その眩しい姿に、私は思わず隣にいる人の姿を見つめた。
     明るい昼間の空のような色の瞳に、実りの秋の稲穂のような色をした髪。誰もがその名を知るハイラルの退魔の騎士。
     かつては無才の我が身と比べ、その存在を疎ましく、また羨ましく思うこともあった。彼は今やハイラルにとって太陽のような存在で、それに比べ、私はやはり月に過ぎなかった。
     ──でも。
    「貴方はまるで、太陽のような人ですね」
     呟くように言うと、リンクが驚いたように少し目を丸くして、私のほうを向き直った。
     ──太陽。かつて誰もが私の母を、ハイラルの太陽と褒めそやした。遍くハイラルを照らす光。地上に遍く無償の愛を捧げる、完全無欠の存在。
     しかし、成長し、シーカー族の研究者たちから星と月、そして太陽の話を聞いた今の私は、太陽について、以前とは違う印象を持っていた。
     太陽とは燃える恒星だ。つまり、自らを燃やしながら輝く存在なのだ。
     ──そしてそのことを知ってから、私は星と太陽の話を聞くたび、彼のことを思い出すようになった。

     リンクはしばらく呆けている様子だったが、愛馬に催促され、慌てて愛馬にニンジンやリンゴをあげた。私も自分の愛馬に軽く促されて、彼女の鬣を梳る。
     以前リンクに教えてもらったように、辛抱強くなだめ続けた結果、この子ととても仲良くなれた。
     素晴らしい俊足と、美しい毛並みを持つこの子のような馬は、とても誇り高い性格で、自分が心を許し、忠誠を誓った者にしかその背に騎乗することを許さない。
     リンクからそう聞いた私は、彼の手助けもあって、こっそり城の馬舎に泊まり込んで馬の世話をしたり、リンクと一緒にこの子に乗って遠駆けをしたりするようにした。そうしているうちに、誇り高く、人になかなか心を許さないこの子が、ひとたび心を許した者にはとても忠実で、愛情深い性格なのだと分かってきた。
     私はこれまで、多彩な能力を持つ人は、何でも一人でできるので、孤独を好む性質なのだと勝手に思い込んでいた。かつての私が、才能に溢れたリンクが、無才の私のことを蔑んでいるのではないかと疑っていたように。
     だが、何でもできる人は、実際には寂しがり屋で、世話焼きな人が多いのかもしれない。私の愛馬も、そしてリンクも、時には過保護というくらいに私の世話を焼いてくれるようになった。
     ──それはさておき、私は鼻を私の頬に寄せて、撫でろとせがむ愛馬の鼻先を優しく撫でた。私に撫でられた愛馬は、満足そうに目を細める。この子がこうして目を細めているときは、とても満足しているときなのだということを、私はこの子と仲良くなってから気づいた。
     ひとしきり撫でられた愛馬が満足すると、私はリンクのほうへと向き直った。愛馬の世話を終えた彼は、周囲を哨戒しているらしく、視線は私ではなく遠くを向いている。月明かりに照らし出された彼の横顔にどのような感情が浮かんでいるのかは、私には読み取れなかった。

    「姫様は自分にとって、空に浮かぶあの月のようなひとです」
     ──だから、とても何気ない口ぶりで、まるで独り言ででもあるかのように放たれたその言葉に、私は咄嗟に反応することができなかった。
     そして、何の脈絡もないようなその言葉が、先ほど私が彼を評した言葉に対する返答なのだと分かり、私は思わず呟いた。
    「月、ですか……」
     こちらも独り言のようなその言葉をリンクが拾い、私のほうに向き直る。私を見つめるその目はなぜか、うっすらと細められていた。
     ……最近になって気づいたことだが、彼はこうして時折、目を細めて私を見つめてくる。最初は目の調子が悪いのかと思ったのだが、その後すぐ、私の目では見えないくらい遠くにいるキースをたった一本の矢で射落としていたので、視力の問題ではなさそうだった。
     そういえばつい先ほども、彼はこんなふうに目を細めて私のことを見つめていた。野営だと言うのになぜか私の好物ばかり、それも、とても私一人では食べきれないほど大量に──最終的には、私の残した分はリンクが全て平らげてくれたのだが──作られた彼の手料理を私が食べているときだった。それだけではない。数多くある中でも、私がとくにお気に入りの写し絵を眺めているとき。遠い昔の、まだ私が幼い頃の思い出話をするとき。私が彼の故郷の話に耳を傾けているとき。ハイラルの動植物の話に熱中してしまった私が、ふと話を止めたとき……。思い返してみれば、彼が目を細めて私を見つめているときは何度もあった。
     彼の青い眼差しにそうやって見つめられていると、何だか急にいたたまれないような気持ちになってくる。私は気を紛らわすように、夜空に浮かぶ月を見上げた。
     ゲルドの砂漠やフィローネの森で感じる太陽の光は、時に熱く、刺すようでさえあった。けれど月の光は、その冷めた色とは裏腹に、熱くも冷たくもなく、ただ清らかに世界を照らし出すだけだ。
     今宵の月は弓張月。吟遊詩人が唄う昔語りには、かつて黄昏の勇者とともに戦った巫女なる姫は武芸を嗜んでいて、月のように光り輝く弓で、魔王と戦ったという。
     巫女に求められる力がただ一点「聖なる封印の力」となった今では、私は武器をこの手に持ったことは一度もないが、黄昏の勇者とともに戦った姫は、弓を携え、己の勇者とともに戦ったのだ。
     ……そういえば、リンクも弓の名手だと聞いている。私はかつて、王侯貴族の前で鳴弦の儀を披露したときのリンクの姿を思い浮かべた。
     勇者がその手に携えるのは「退魔の剣」。古来、ハイラルではそのように言い伝えられて久しい。リンクは片手剣だけでなく、大剣と槍を扱うこともできるし、リトの英傑・リーバルと並ぶ弓の名手でもあるのだが、「退魔の剣」の扱い手であるゆえか、彼がその弓の腕前を披露することは稀だった。
     ──彼が射る矢は、どんな軌道を描いて飛ぶのだろう。私はふと、そんなことを考える。リンクが戦う姿は、カラカラバザールとオルディン渓谷で見たけれど、彼はどちらも剣で戦っていた。……
     退魔の騎士であるリンクは、姫巫女である私にとって、対となる存在だ。聖なる力にいまだ目覚められない私には実感できないが、幼い頃から親しい友人より、血を分けた家族より、彼の魂は「ゼルダ」の傍近くにあり、これからも共にあり続ける。
     聖なる力に目覚めていた母や祖母ですら生涯出逢うことのなかった、聖三角形の一辺を担う半身。
     ……幼い頃から才気煥発との誉れ高く、すでに退魔の剣を携えている彼は、魂に刻まれた数多の「ゼルダ」への想いを、実感として抱いているのだろうか。もしそうであるならば、才能豊かな「ゼルダ」達と比べて今の私を、どのような存在と捉えているのだろうか。「私」を月のような存在だと言う彼の言葉に、そんな考えばかりが頭をよぎる。
     聖なる力も、巫女としての実感も持たない私にとって、「勇者」や「退魔の騎士」はおとぎ話や伝説で語られる、主人公の一人に過ぎなかった。彼と出逢い、言葉を交わすまでは。
     無責任に太陽のようだと評していた彼のその輝きが、どのように発せられるものであるかに気づくまでは。
     私にとっての「勇者」が、彼ただ一人なのだと気づかされるまでは。
     ──だから、彼の言う「月」がどのような存在であるのか知りたいと、今このときこの瞬間、強烈に願った。

     私は月からリンクへと視線を戻し、そのままじっと彼を見つめた。じっと自分を見つめる私に根負けしたように、リンクはほんのわずかな困惑と含羞をその表情に滲ませながら口を開いた。
    「最初は、貴族の子弟たちが姫様のことをそう褒めそやすのを、ただ聞いているだけでした。
     姫様が正装でお召しになるドレスは、昼間の空というよりは夜空を思わせる物ですし、諸外国の例でも、国にとっての太陽を国王や王子、月を王妃や王女になぞらえる例が多いですから。
     ですが──」
     言い淀むリンクに、私は続きを促すように頷いた。リンクは訥々と続ける。
    「遠征などで夜、疲れて休んでいるとき。城から遠く離れたとき。ふと空を見上げて、月を見つめては、貴女のことを思い出しました。
     そして、気づいたんです。
     暗い夜の闇の中に一人きりでいる時に、世界を明るく照らしてくれる存在。それが月です。そして、自分にとって、貴女はそういう存在なんです。
     夜の孤独に押しつぶされそうな時は、貴女の声を思い出します。貴女が自分を呼ぶ声を思い出すたび、魔物との戦いの中、自分が何者なのか分からなくなる意識が引き戻される。今お傍にいられなくても、貴女はこの世界のどこかで、同じ空の下で、自分を待っていてくれる。
     そう思うだけで、自分は何にでもなれるし、どこへでも行ける。心からそう思えるんです」
     そう言ったきり、リンクは黙り込んだ。
     時にその仕草や態度が言葉以上に雄弁になる彼が、それでもあえて「言葉」を尽くして私に伝えようとしてくれたことを反芻して、私も黙り込んでしまった。
     ──私が彼をただ「太陽のようだ」と評する以上の思いを彼に抱いていたように、彼もまた私に対して、世間一般が私を「月」と評する以上の思いを私に対して抱いてくれていたのか。それも、「太陽」に対する「月」として。
     そこに彼の、私に対する信頼が感じられて、私は知らず頬を緩めていた。
    「ありがとう、リンク」
     私の言葉に、リンクは一瞬少したじろいだように身を震わせた。
     そして小さく、今度こそ本当に、独り言のように呟いた。
    「太陽は、月を捕まえられません」
     私がその言葉の真意を確かめようとする前に、リンクは馬に跨った。私も慌てて愛馬に跨る。
     リンクの言う通り、薄らいだ月は西の空に傾き始め、それを追いかけるように朝日が徐々に東の空から昇りつつあった。
     朝焼けが迫り、秘めやかな夜の時間は終わりを告げようとしている。急いで探さなければ、星のかけらをこれ以上見つけるのは難しいだろう。
     追い立てられるように明ける夜の月に向かって、私たちは走り出した。
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    四 季

    DONEリンクが姫様に自分の家を譲ったことに対する自分なりの考えを二次創作にしようという試み。(改題前:『ホームカミング』)
    帰郷「本当に、良いのですか?」
     ゼルダの問いかけに、リンクははっきり頷き、「はい」と言葉少なに肯定の意を示した。
     リンクのその、言葉少ないながらもゼルダの拒絶を認めない、よく言えば毅然とした、悪く言えば頑ななその態度が、百年と少し前の、まだゼルダの騎士だった頃の彼の姿を思い起こさせるので、ゼルダは小さくため息を吐いた。

     ハイラルを救った姫巫女と勇者である二人がそうして真面目な表情で顔を突き合わせているのは、往時の面影もないほど崩れ、朽ち果ててしまったハイラルの城でも、王家ゆかりの地でもなく、ハイラルの東の果てのハイリア人の村・ハテノ村にある、ごくありふれた民家の中だった。
     家の裏手にあるエボニ山の頂で、いつからか育った桜の樹の花の蕾がほころび始め、吹き下ろす風に混じる匂いや、ラネール山を白く染め上げる万年雪の積もり具合から春の兆しを感じたハテノ村の人びとが、芽吹の季節に向けて農作業を始める、ちょうどそんな頃のことだった。ゼルダの知らないうちに旅支度を整えたリンクが、突然、ゼルダにハテノ村の家を譲り、しばらく旅に出かける──そう告げたのは。
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    MEMOもしも百年前古代のVR オンラインゲームを発掘されたら古代遺物からVRオンラインゲームを発掘された。ハイラル大地を周遊し、七賢者の石を収集すると女神の力が得られるというゲームらしいだ。もしかすると力が目覚めるヒントが隠されるかもしれないと思ってゼルダはゲームをやり始める。

    キャラクターの外見、年齢、性別などすべて調整可能なので、リアルの姫の身分を捨てて自由にハイラル大地を冒険する。様々の依頼を受けながら立派な冒険者に成長していくゲームにハマってる。毎晩夜中までゲームをプレイしてる。

    ある日に、モルドラジークを倒す依頼を受けて、一番苦戦してたやっとモルドラジークが地面に倒れるところにどこから知らず少年は急に現れモルドラジークを討伐遂げた。せっかくのポイントは奪われてゼルダはムカついた。

    「ポイントを返してください」
    「悪い。この魔物を倒したのは俺だったので」
    「ずるいわ!私は先に倒さなければ貴方がそんな簡単に任務を成し遂げたわけじゃないの」
    「はあ?!俺はいなければ君はもう始まりの台地へ戻された(Game Over)よ。感謝してくれ!」
    このようなケンカになった。少年に置き走られてしまうゼルダは大激怒しそのポイントを必ず奪い返すと誓う 1911