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    四 季

    @fourseasongs

    大神、FF6、FF9、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが好きな人です。

    boothでブレワイに因んだ柄のブックカバー配布中:https://shiki-mochi.booth.pm/

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    四 季

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    ブレワイの話を書き終えていないのにティアキンが発売してしまって書きかけになってしまったものを少しずつ出していこうと思います(ティアキン何回かクリアしてブレワイに戻ったらまた続きを書くかも……)
     支部に掲載している『旅路』シリーズ、平原外れの馬宿の話。

    #ブレワイ
    brawley

    旅路(平原外れの馬宿) 馬宿には色々な人が通る。
     多くはハイリア人の旅人や行商人で、「馬宿」とはいうものの、馬を所有している人間がそれほど多くない今のハイラルにあっては、その大半の人びとの交通手段は徒歩であり、今の馬宿はどちらかといえば、そういった、徒歩で旅するハイリア人の宿屋としての役割が大きい。
     馬を所有している人間が少なくなってしまったのは、ひとえに馬を捕まえるのが大変だからだ。百年前のハイラルであれば、マリッタ地方などにあった牧場で馬が育てられていたが、大厄災で主を失った馬たちはその後野に放たれ、彼らの子孫も多くが野生馬となってしまった。
     馬の主人となるためには、警戒心の強い馬に近づき、彼らを宥めた上で馬宿に連れて来なければならない。馬宿の周辺に野生馬が多い──というより、野生馬の多い場所に馬宿が建てられているのは、そういった理由による。
     馬好きだった祖父の影響で自身も馬が好きなトーテツが、平原外れの馬宿に勤め始めてから随分経つ。百年前の大厄災以降、ハイラルで最も危険な場所となったのがハイラル平原で、かつては始まりの台地に赴く旅人や、闘技場へ行く人びとの休憩場所であったというこの馬宿は、今ではハイラルの東部と西部を繋ぐ、交通の要衝となっている。
     トーテツが平原外れの馬宿を勤務地に選んだのは、この場所が交通の要衝であったという理由もあるが、数ある馬宿の中でもハイラル中央に近いこの馬宿には、百年前に王侯貴族や騎士が乗ったという素晴らしい馬の話がいくつか残されているからだった。
     その中でも一番有名なのは、ゼルダ姫が乗っていたという白馬の話だろう。輝くような白い体躯に、金色のたてがみという、聖なる姫が乗るにふさわしい美しい馬だったという。姫は時折、馬の遠乗りで、この馬宿より西にあるサーディン公園に向かった。そのとき、この平原外れの馬宿を通ったのだそうだ。
     姫の愛馬ももちろんだが、姫のお付きの騎士が乗っていた愛馬も、それは素晴らしい駿馬だったという。白馬に乗って歩く姫と、その後ろを少し遅れて栗毛の馬に乗って護衛する騎士の姿は、まるでおとぎ話から抜け出たような素晴らしい光景だったと、生前トーテツの祖父は、まるでおとぎ話でも語るかのように語っていた。
     馬に乗る技術は持たないが、馬を愛してやまないトーテツは、いずれ祖父のように、そんな素晴らしい馬と、その馬の主に出会ってみたいものだと思いながら、今日も馬宿の仕事に勤しんでいた。

     そんなある日、馬に乗った見慣れぬ青年が、平原外れの馬宿を訪れた。
     青年の姿がトーテツの目をひいたのは、剣を携え盾を背負った青年の騎乗する姿が、どこか昔聞いたおとぎ話に登場する騎士を彷彿とさせるものであったのと同時に、青年の乗っていた馬の、その躍動感ある走りによる。
     青年が乗っていた馬は、この辺りでは見ないような、素晴らしい栗毛の単色馬だった。単色の馬は、斑種のより捕まえにくく性格も気難しいが、その分走る速度や襲歩ができる回数の面では軍配が上がる。誇り高いその馬は主人にとてもよく懐いているようで、主人の手から直接りんごやニンジンを食べていた。馬の主人である青年も、そんな愛馬に優しい視線を注いでいる。
     馬が好きな人間に悪い人間はいない。トーテツはつい、この青年に、サルファの丘で見かけた王家の白馬の子孫について話してしまった。
     トーテツの祖父は昔、白馬に乗ったゼルダ姫の姿を見たことがあるという。それはこの世のものとは思われないほど美しい姿だったと……。
     サルファの丘にあるサーディン公園跡。遠い昔に別れた主人を待っているかのように、美しい白い馬が時折そこに姿を現す。
     もちろん、百年前の大厄災のときに生きていた馬が、今も生きているわけではない。馬の主人であった姫についても同じだ。だが、只人に過ぎないトーテツが追いかけても逃げてしまったその馬が、しかしじっと遠くから道行く人を見つめているその姿が、己の主を見定める、あるいは見つけようとしているように、トーテツには見えてならなかった。
     青年と話しながら、トーテツは、この青年ならば、あるいは、と思った。馬を愛する心や、馬に乗る技術だけでなく、白馬の主の話をしたときに、青年の表情が変わったのをトーテツは見逃さなかった。それはさながら、自らのあるじを探し続けている忠義な従者の姿で、その姿はあの白馬と重なるように見えた。
     かつてトーテツの祖父が、目を輝かせながら話した百年前の回想。荒れ果てたこのハイラルの地で、その物語がただのおとぎ話以上にトーテツの心の奥深くで輝きを放っているのは、古き良き時代への憧憬か、あるいはこのハイラルの地に伝わる伝説を戴く姫君への追想の念からか。
     いずれにせよ、トーテツと話をした数日後、青年はトーテツの期待通り、あの白馬を見事に乗りこなして平原外れの馬宿に姿を現したのだった。

     ハイラルの各地を駆け巡っているらしいその青年は、数週間ぶりに中央ハイラル地方に戻って来ると、平原外れの馬宿に預けていた白馬を愛おしそうに見つめた。白馬も、親しい友に会ったかのように、優しく身体を撫でる青年の手に身を委ねている。
     王家の馬の子孫である白馬は素晴らしい能力を持つ馬だが、同時に気性が難しい。よくぞ手懐けられたものだと、トーテツは青年に感心していた。
     青年が栗毛の馬に荷を積んでいると、白馬は少し不満そうに足を踏み鳴らした。自分を連れて行かないのかと主張しているかのようだ。
     そんな白馬の姿を見て、青年が苦笑した。
    「ごめんな、お前のご主人には、もうすぐ会えるから」
     ずっと待ってたもんな、と労わるように青年が言うと、白馬は答えるように小さく嘶き、大人しくなった。
    「じゃあ、こいつをよろしくお願いします、トーテツさん。
     それほど日を置かずに、また迎えに来ますから」
     ハイラル中を駆け巡り、長い時には数週間、姿を現さないこともある青年が、はっきりとそう口にするのは珍しい。
     トーテツは少し驚いて、青年と白馬を見比べた。
    「おや、私は君がこの子の主人なのかと思っていましたが、この子の主人は別にいるんですね」
     トーテツの言葉に、青年は大きく頷いた。
    「ええ。こいつはきっと、その人のことをずっと待っていたんです。だから俺に捕まってくれたんだよな」
     青年の言葉に、馬はそうだと言っているかのように短く嘶いた。
    「そうですか。この子が主人と定める方に、私も早くお会いしたいものです」
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    四 季

    DONEリンクが姫様に自分の家を譲ったことに対する自分なりの考えを二次創作にしようという試み。(改題前:『ホームカミング』)
    帰郷「本当に、良いのですか?」
     ゼルダの問いかけに、リンクははっきり頷き、「はい」と言葉少なに肯定の意を示した。
     リンクのその、言葉少ないながらもゼルダの拒絶を認めない、よく言えば毅然とした、悪く言えば頑ななその態度が、百年と少し前の、まだゼルダの騎士だった頃の彼の姿を思い起こさせるので、ゼルダは小さくため息を吐いた。

     ハイラルを救った姫巫女と勇者である二人がそうして真面目な表情で顔を突き合わせているのは、往時の面影もないほど崩れ、朽ち果ててしまったハイラルの城でも、王家ゆかりの地でもなく、ハイラルの東の果てのハイリア人の村・ハテノ村にある、ごくありふれた民家の中だった。
     家の裏手にあるエボニ山の頂で、いつからか育った桜の樹の花の蕾がほころび始め、吹き下ろす風に混じる匂いや、ラネール山を白く染め上げる万年雪の積もり具合から春の兆しを感じたハテノ村の人びとが、芽吹の季節に向けて農作業を始める、ちょうどそんな頃のことだった。ゼルダの知らないうちに旅支度を整えたリンクが、突然、ゼルダにハテノ村の家を譲り、しばらく旅に出かける──そう告げたのは。
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