安寧 頭の中で金づちでも振るわれているかというほどの痛みに、ほとんど気を失うように眠りに落ちて、どれほど経っただろう。どうにも寒くてならず、ビョルンは否応なしに、眠りの淵から引き上げられた。
かぶっていた毛皮をさらに耳元まで引き上げ、肩の下に端を巻き込んだが、そうすると足の先が出てしまう。薄暗い室内を見回すと、向かいの寝台に毛皮が積んであるのが目に入った。重い足を引きずり、一枚取ってきて肩からかぶる。多少は寒さがやわらいだようだが、こればかりはこの高熱がおさまるのを、じっと待つしかない。
しばらくうとうととしていると、耳慣れた足音が近づいてくるのが聞こえた。やがて扉がきしむ音がして、月桂樹の香りをかすかに感じる。寝返りをうとうとしたとき、すっと額に、彼の手が触れた。いつもながら体温の低い、乾いた手だった。
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