ただ、君だけが「本番」魏無羨が入口で惚けていると、藍忘機が促すように腰に触れた。
振り返った魏無羨はまじまじと藍忘機を見る。
「どうかしたか」
「いや、本当……何食べたらそんないい体になるのかなって思って」
「特別な物は何も」
「ずるいなぁ」
魏無羨が上から下までジロジロと見るため、藍忘機は居心地が良くないようで。
「魏嬰、こちらに」
「はーい」
藍忘機は魏無羨の手を引いて連れて行くと、魏無羨を洗い場の椅子に座らせた。
「なんか、全部お前がやるって思うとさ、お姫様にでもなった気分だよ」
「お姫様なのだろう?」
「あの時のあれはノリで言っただけだろ」
あはは、と笑いながら、魏無羨は藍忘機がお湯の温度を確かめる姿を眺めた。
均整の取れた体は白く、筋肉がしっかりとついた体はしなやかだ。魏無羨のいたずらごころにも火が灯る。
椅子に座ったまま、魏無羨は藍忘機の背中へ手を伸ばした。
「魏嬰?」
ぺたりぺたりと触れる魏無羨は、藍忘機を後ろから抱き締め好きなように触る。
喉から胸へ手を滑らせ、密着した藍忘機の背中に擦り寄った。
「やめ、やめなさい」
「やだよ」
藍忘機はくすぐったいようで、魏無羨の手を掴むと引き剥がした。
捕まれた手をひっくり返し、魏無羨は藍忘機の手に指を絡ませる。密着したままの体からは激しい鼓動が聞こえた。
「藍湛。藍湛も緊張してる?」
「うん。君に早く触れたい」
「もう触ってるだろ」
きゅ、と握られる手に、藍忘機は頭を振った。
「魏嬰」
「ん……藍湛……」
体の向きを変えた藍忘機は、魏無羨の唇へと齧り付く。
深く舌を絡ませながら、藍忘機の手は魏無羨の体を余すことなく撫でていく。
後頭部に手を添えて、藍忘機は魏無羨の口内を深く深く探る。
「あ、あ、」
太ももを下から上へと撫でていた藍忘機の手は、そっと魏無羨自身を握りこんだ。
ゆったりとした手つきで揉みしだかれ、魏無羨は甘い声を漏らす。思わず閉じそうになる脚をどうにか開いたままにして、藍忘機の首へと両腕を絡ませた魏無羨はうっとりとした目で藍忘機を見た。
「んっ……また俺ばっか気持ちよくなってる……」
「後でお返しして」
「……うん」
ぬるぬるとした先走りを竿全体に塗り付け、藍忘機の手が先程よりも少し速く動く。強弱をつけて擦られれば、魏無羨の腰はその手の動きに合わせて揺れた。
「あっ藍湛……っぐりぐりするなって……っ」
先端部分は極めて敏感で、藍忘機の指先がいたずらに刺激を加えてくる。体を跳ねさせながら、魏無羨はお返しとばかりに藍忘機の唇を舐めた。
「らん、じゃん……ッ」
声が上ずって息が乱れていく魏無羨の様を食い入るように眺め、藍忘機は魏無羨を追い詰めていく。
ガクガクと震える脚をさらに開かせて、藍忘機は限界の近い魏無羨の耳元に唇を寄せた。
「イッて、魏嬰」
「あ……〜〜〜ッ、あっあぁあ……」
パタパタと白濁が弧を描いて藍忘機の腹と浴室の床を汚す。
ビクビクと肩を跳ねさせ、魏無羨は藍忘機にもたれかかった。息を切らせつつ魏無羨が藍忘機を睨むも、紅潮した頬に潤んだ瞳では怖さなど皆無であった。
「魏嬰、可愛い」
「可愛くなんかないし」
「君は可愛い」
「あんっ、ちょ、まだ敏感だから……っ」
言い聞かせるように繰り返し言ってから、藍忘機は魏無羨の体を洗うべく、スポンジにソープを垂らした。泡立てたスポンジで優しく魏無羨の体を洗ってくれるのだが、達したばかりの体ではそれすら刺激となってしまい、魏無羨は悲鳴にも似た声を出した。
それからさらに2回ほど藍忘機の手によって絶頂を迎えさせられた魏無羨は、ぐったりとして湯船に沈んでいた。
「藍湛……これじゃ身が持たない」
「そう」
「お前のせいなんですけど」
「この後は、ここも洗う」
そう言って湯船の中、浴槽に突っ伏している魏無羨の尻を撫でた。
「う……お前がさっきゴムと浣腸とローションを買った時点で予想してたけど、まじで……? 男同士って本当にそこ使う?」
「使う」
「うう……される側の身にもなれ……」
「ちゃんと気持ちよくなってほしいから、やれることは全部やる」
「く……愛されてるのはよく分かった」
腹をくくろう、と魏無羨は湯船の中で藍忘機に抱き着いた。
そして、藍忘機に支えられながら、そっと藍忘機の足の間に膝頭を潜り込ませる。
「う、魏嬰……」
「はははっやられっぱなしだからな。お返し」
魏無羨だとて、藍忘機には気持ちよくなってほしいのである。
魏無羨に顔中にキスをされながら、藍忘機は魏無羨からの刺激を享受した。気持ちよくなることに抵抗は無い。それが好いた相手の手で導かれるのであれば尚のことだ。
藍忘機は魏無羨の体を撫でながら、誘われるままに快感を追った。
「魏嬰、やりたいことがある」
「ん、なに……?」
二人共に息を乱しながら、お互いを見つめていた。
髪の先から滴る水滴が、ポタリと肌に落ちて流れていく。
「素股を、してみたい」
「藍湛からそういう言葉を聞くとドキドキするな……」
「何故?」
「普段言わないからだよ! ……いいよ。でも、湯船の中だとのぼせそう」
そう言って、魏無羨は湯船から上がり、そっと壁に手をついた。
「来いよ」
「うん」
ごくり、と鳴ったのはどちらの喉だったろう。
魏無羨の真後ろに立った藍忘機はそっと魏無羨の太ももへ自身を挟んだ。
ゆっくりとした動きで腰を前後に動かすと、程よい締め付けに昂っていくのが分かった。
角度と硬度を増していくそれは、魏無羨自身をも擦り上げていく。
(あ、これは俺も気持ちよくなるやつだ……ッ)
「ん、あ、あ」
とちゅ、とちゅ、と藍忘機が腰を振る度に魏無羨の体も跳ねる。藍忘機に腰を掴まれ、魏無羨は壁に上体を預ける形で尻を突き出していた。
「魏嬰、気持ちいい」
「うん、俺も、これ気持ちい……」
「もっと」
気持ちよくなってほしい、と呟いた藍忘機は魏無羨の腰から手を前へと回した。
「あ!?」
魏無羨の立ち上がった男根を藍忘機が扱く。
魏無羨は既に3度も達しており、敏感になった体は藍忘機からの刺激に耐えられそうにもなかった。
「だめ、だめっ、すぐイく……っ」
「うん」
「手、止めて藍湛……っ」
「魏嬰、イッていい」
「ひぅ……っや、もう、く、あぁあぁぁ……」
ガクガクと脚を震わせて、魏無羨は色が薄くなった白濁を壁にかけた。その際、藍忘機を挟んだ太ももにも力が入り、藍忘機もまた白濁を勢いよく撒き散らした。
どろり、と太ももの内側を伝う白濁を見下ろし、魏無羨は力の入らなくなった体を藍忘機に預けた。
「藍湛もたくさん出したなぁ」
「うん……」
恥ずかしそうな様子の藍忘機に「俺はもう4回も出させられてるってのに」と魏無羨は息も絶え絶えになりながら笑った。
「魏嬰、いい?」
「う……分かった。けど、運んでくれる? 今ので足に力が入らなくなっちゃったよ」
「任せて」
ひょい、と抱えられた魏無羨は、甘えるように藍忘機にすがりついた。
安定感のある腕の中が、初めて抱き上げられたあの時からお気に入りなのだが、それはまだ藍忘機には伝えていない。
藍忘機に全てを任せている、という感覚が好ましかった。
「藍湛、あんまり痛くしないでね」
「うん。気を付ける」
そして、地獄の洗浄を味わった魏無羨は、体を震わせながらベッドへと横たわっていた。
(辛くも痛くもないけど、なんだあの小っ恥ずかしさは)
気持ちとしては排泄を見られていたかのようで。
とてもじゃないが次回からは手伝って欲しくない気持ちにもなる。ただ、耐え抜けたのは、偏に藍忘機があれこれと気を紛らわせるために口付けたり、触れたりしてくれたおかげで。
(一人でやるのも無理かも……)
余りにも衝撃的でベッドに突っ伏したまま顔をあげることもできない。
「魏嬰、調子悪い?」
「そんなことない」
「顔を上げて」
「……や」
魏無羨はすぐ側に座った藍忘機の腰を抱き締める。
藍忘機も魏無羨も裸であり、際どい位置に魏無羨の頭が置かれた。
「魏嬰、嫌だった?」
「嫌と言えば嫌だけど、必要なんだろ?」
「うん。君を抱くにはやっておいた方が良いらしい」
正しい手順とやらを調べたと言う藍忘機は、調べた通りに実行しているようで、魏無羨は何とも言えない表情で藍忘機を見た。
「ねぇ、藍湛。本当にそこを使うの? 間違いない?」
「使う」
「お前のその凶器が入るとは、俺、思えないんだけどなぁ」
「入る」
「それに、そんなとこで気持ちよくなれるのか?」
「なれる」
藍忘機に転がされた魏無羨はベッドに仰向けに寝転んだ。すぐさま藍忘機が覆い被さる。
「少しずつ解す」
「さっきのでも十分じゃないのか」
「まだ足りない。もっと解さないと、君が辛くなる」
藍忘機はくるくると円を描くようにして魏無羨の後孔を撫でた。体を強ばらせる魏無羨を安心させるように、藍忘機は魏無羨に何度も口付けを送る。
魏無羨の表情が蕩け始めた頃、藍忘機の指先がそっと後孔へと埋められる。瞬間、魏無羨の表情は一変した。
「……う……」
「痛い?」
「い……たくない、大丈夫」
顔が青ざめていく魏無羨を心配し、藍忘機は埋めた指先を抜き去った。
「ら、藍湛っ大丈夫だから続けて」
「しかし」
「俺、早くお前が欲しい、から」
「……分かった。もう少し辛抱していて」
魏無羨が唸りながらも受け入れようと必死になる姿に、藍忘機は胸の奥が熱くなったような気がした。
少しずつ解して、藍忘機の指をようやっと2本受け入れられるようになった頃、魏無羨は呼吸を荒らげながら藍忘機に聞いた。
「ねえ、まだ無理そう?」
「あと1本受け入れられなければ無理だ」
魏無羨は泣きそうな顔をしたが、藍忘機に止めるようには言わなかった。
(魏嬰……とても辛そうだ)
受け入れる側は異物感が酷いと聞く。藍忘機はすっかり萎えている魏無羨自身を見やり、そっと舌を伸ばした。
「えっ?! あ、藍湛、どこを舐めて……っ」
ダメだ、と叫ぶ声を無視して、藍忘機はそれを深く口内へ招き入れた。
しゃぶるように舌を絡ませ、吸い上げると、口内で形が変わってゆく。滲む先走りも余すことなく舐め取り、魏無羨の弱いところを重点的に責め立てた。
「あっあ……っ!」
魏無羨の両手に阻まれながら、藍忘機は何度も吸い上げては舐め上げる。次第に魏無羨の手は藍忘機に縋るように添えられていた。
「あぁぅ、も、やめ、」
しとどに濡れて滑りが良くなると、魏無羨の呼吸も浅く早くなっていく。
じゅぷ、と水音を立てれば魏無羨の体が大袈裟に反応を示すため、藍忘機は故意に音を立ててやった。
魏無羨の後孔に埋めた指で何度も腹側を押してやりながら指を追加していく。
どうにか指が3本入るようになった頃、魏無羨は必死に「口を放せ」「もう出る」と訴えたが、藍忘機には聞き入れて貰えなかった。
「く……っっ」
魏無羨は耐えきれずに達していた。
「はあっ……! はあ……! あっ、は……んん」
口の中で脈打つそれを丁寧に舐めて、藍忘機は再び深く咥える。
「あぁぁぁ……やだ……やだぁ……イったばっかなのにぃ」
過ぎた快楽は苦痛となって魏無羨を襲う。
藍忘機に腹の中を掻き回され、魏無羨は無意識に足を跳ねさせた。魏無羨が頭を振って抵抗しても藍忘機は止めようとはせず、気持ち良すぎて訳が分からなくなる頃になってようやく、藍忘機は魏無羨を解放した。
「藍湛……も、むり……」
「気持ちよくなかった?」
「逆だよ! 良過ぎて、溶けるかと、思った……」
息も絶え絶えになりながら、魏無羨は藍忘機を見る。
体がぴくぴくと震えて止まらない。
指を引き抜かれると、途端に物足りなく感じてしまう。
「ねえ、まだお前をくれないの……? 指よりいいもの、くれるんだろ?」
気だるい体を叱咤して、魏無羨は藍忘機の体を引き寄せる。
尻を藍忘機の股間に擦り付けて、魏無羨は「早くちょうだい」と呟いた。
「煽るな……!」
優しくしたいのに……っ、と藍忘機は苦しげに呟き、魏無羨の腰を力強く掴んだ。掴んだ指の痕が残るほどの力であったが、魏無羨は藍忘機を受け入れることしか考えておらず、痛みは感じなかった。
「藍湛、ね、はやく……もう待てない」
はやく入れて、と唇が動く。
藍忘機は手早くゴムを装着すると、青筋の浮かぶ額にたくさんの汗を浮かべながら、魏無羨の後孔へと昂りを押し当てた。
「あああっ!! 大きぃ……っ」
一気に最奥まで埋め込み、藍忘機は呼吸を詰めた。
魏無羨はぼろぼろと涙を零して衝撃に耐えている。
「魏嬰、呼吸をして」
「は……っ、あ、く……」
「魏嬰!」
魏無羨は藍忘機が何を言っているのか理解出来なかった。
あまりの衝撃に思考が追い付かず、呼吸の仕方が分からない。
苦しくて仕方ないが、藍忘機が慌てているのでどうにか安心させてやらなければと考える。
口を開けても息が吸えず、魏無羨はただぱくぱくと口を動かして体を震わせていた。
藍忘機は1度大きく息を吸うと、そっと魏無羨に口付ける。魏無羨の鼻を覆って、息を吹き込んだ。
ヒュ、と音が鳴り、魏無羨は大きく咳き込む。
「ゴホッゴホッ」
「魏嬰……!」
「は、は……苦しかった……はぁはぁ」
「魏嬰……」
「大丈夫だって。ちょっと体がびっくりしただけだから」
それより、動かないのか? と聞いてくる魏無羨に藍忘機は目眩がしそうだった。
蒸気した頬を転がり落ちる涙は生理現象なのだろう。
藍忘機は魏無羨の涙を拭ってやりながら、魏無羨の腹を摩った。
「入ってる」
感動した、と言わんばかりの呟きに魏無羨は思わず吹き出した。
「藍湛、あんまり可愛いこと言うなよ」
「やっと、繋がれた」
再びぽろりと魏無羨の頬を転がり落ちる涙を指で拭ってやりながら、藍忘機はじっと動かずに待っている。
魏無羨の体が馴染むまでは動くつもりは無かったからだ。
「藍湛、つらいだろ? 俺も男だから分かるよ。なあ、動かないのか」
「君が慣れるまで、待つ。痛いのだろう」
「お前は本当……俺は早くお前に食われてる感覚を味わいたいよ」
「だめ」
「じゃあ、勝手に動くよ」
魏無羨が両足を大きく広げて腰を揺らすものだから、藍忘機の理性の糸もあえなく千切れて消えていく。
藍忘機は、ブチン、と耳の奥で音が響いたような気がした。
「……魏嬰」
「お? やる気になっ……?!」
腰を掴み直し、藍忘機は魏無羨の中から抜けきる寸前まで自身を引き抜き、再び中を埋めた。
肌がぶつかり合う音が大きく響く。
ばちゅ、と音が1つなるたびに魏無羨の視界には星が飛ぶ。ちかちかと明滅する視界の中、激しい抽挿に魏無羨は藍忘機にしがみつく他なかった。
痛みに呻く様子に、藍忘機は動きを止めた。
「藍湛、止ま……ないで」
眉間に皺を寄せ、必死に呼吸をする魏無羨は、藍忘機の首に腕を巻き付けて引き寄せると、唇を合わせてきた。
「お前とキスしてたら、痛みとかどうでもよくなるから」
だからたくさんキスが欲しい、とねだればはたしてそれは叶えられた。
藍忘機は何度も深く口付けながら、魏無羨の中を穿つ。
(マジで苦しい。こんなんで気持ちよくなれたりするのか?)
ただただ苦しい中で喘ぎながら、魏無羨は少し身を捩った。
「あ?!」
とある場所を掠めた時に、びくり、と大きく魏無羨の体が跳ねて藍忘機が動きを止めた。
「魏嬰?」
「今のとこ、何……すっげ、びっくりした」
電流が走ったようだったと魏無羨は驚いた顔のまま藍忘機に言う。
「どこ?」
「ええと……」
魏無羨はゆるりと動く藍忘機に合わせて、腰を捩る。
「んっ! この、辺……?」
腹を摩りながら、魏無羨は藍忘機を上目に見上げた。
途端、藍忘機は心得たように頷き、教えられた場所を深く抉った。
「あぁぁぁああっ!? 待って藍湛、つよい……もっと、優しく……!」
直ぐに魏無羨は天にも登る心地を味わった。
何度も突かれて短い喘ぎ声が止めようもなく漏れてしまう。
魏無羨は、藍忘機に脚を抱えられて深く体を折り曲げられた。
「あう……! や、深すぎる……っ」
奥へ奥へと入り込む藍忘機を止めるすべもなく、魏無羨は絶頂感を味わい続けた。
「すまない……自制できそうにもない」
余りにも気持ちが良くて、と藍忘機は困ったように言う。普段の感情の読み取れない藍忘機はそこにはおらず、ただ一人の男がそこにいた。
目元を赤く染めた藍忘機は、謝りながら魏無羨を組み敷いている。その腰は止まることはない。
魏無羨はそんな藍忘機を見上げて、思わず笑ってしまった。
「藍湛藍湛藍湛っ! いいこと教えてあげる」
「いいこと?」
「柔らかいところだからあんまりガツガツされると痛いんだけど」
「すまない……」
「でも、お前がキスしくれたら、そんなことどうでも良くなるんだ」
「……」
「もっと深く突いても構わないから、キスし……んんっあっ……」
魏無羨が話終わる前に、藍忘機の唇が魏無羨の口を塞いでいた。
激しい口付けに翻弄されている最中、藍忘機はさらに深いところへと潜り込み、魏無羨は身を強ばらせた。
これまで入ってきていた部分までは慣れたところであるが、それよりもさらに奥へと入って来られるとは思って居なかった。
「ふか……っ……深過ぎるっ!」
「深く突いても構わないのだろう」
「ううっ言ったけど……!」
魏無羨は喘ぎながら藍忘機の腰に足を絡めた。
「少し、待ってよ……お願い」
藍忘機が動けないようにしながら、魏無羨はゼイゼイと息をついた。
藍忘機が心配そうな顔で魏無羨の頬を撫でると、途端に嬉しそうな顔をする。
よく回る口は、すぐに藍忘機を誘っていた。
「藍湛、藍湛藍湛っお前は最高だ。初めてなのにすごく気持ちが良いんだ。お前の形に変えられるのもとても嬉しいし、深くまでお前が入ってると幸せだよ。なぁ、藍湛。もっと欲しい。お前をもっとちょうだい」
「君は……!」
「ああっ! 藍湛、優しくして……!」
「優しくして欲しいなら煽るな」
藍忘機はもう黙れと言わんばかりに魏無羨に口付けていくが、魏無羨は口を使わなくとも体全体で藍忘機を誘ってくる。
腰に絡んだ足は藍忘機の腰を引き寄せて離れることを許さないし、触れ合わせた唇は藍忘機を夢中にさせる。
魏無羨の腰を掴んでいた手で体の線をたどるように撫でれば、魏無羨の腹に力が入ったようだった。
藍忘機は何度も深いところを突き、壁と思われる部分を抉ったが、唐突に、入っては行けないところまで入り込んでしまった。
「……っ?!」
魏無羨は目を見開き、声すら出せずに藍忘機を見た。
瞳からはぼろぼろと涙が零れ、唇は震えている。
「魏嬰……?」
心配になって話しかければ、魏無羨はやっと声を出せるようになったのか、途切れ途切れに言った。
「……ひどい、よ、藍湛……そんな、さらに深くがあるなんて知らなかった……! 何これずっとイってる……」
「何も出ていない」
「ひっ……」
抜こうとすると魏無羨は嫌々と頭を振って藍忘機にしがみつく。
「やだ、行かないで。抜けたら寂しい」
「君は、やめて欲しいのか、続けて欲しいのかどっちなんだ」
「藍湛……藍湛……」
魏無羨が名を呼べば、すぐに唇が降ってくる。
藍忘機は魏無羨の顔中にキスをした。
気持ちが良さそうに目を細めた魏無羨は、藍忘機の首元に吸い付いて赤い痕を残した。
「藍湛、動いて。もっと気持ちよくして」
「魏嬰……っ」
ガツン、と藍忘機が腰を打ち付けると、魏無羨は悲鳴をあげた。
気持ち良過ぎて訳が分からない感覚を覚えながら、同時に藍忘機をまざまざと感じる。
腹の中の藍忘機は魏無羨が何かを言う度に硬さを増して、とても素直だと思った。
「藍湛、お前が好きだ」
「私も」
「ふふっお前、今この辺りまで入ってるんだぞ。すごいな」
「……だからっ! そういうことを言うなと……!」
「ああっ?! ら、藍湛……っ待って待って」
「無理だ」
藍忘機も限界だった。
散々煽られて、魏無羨を気持ちよくしたいと最初のうちは余裕があったはずなのに、気付けば魏無羨の言葉に翻弄されて、最早体は藍忘機の思いどおりにはならなかった。
腰は大胆に動いて魏無羨の中を容赦なく暴き、膨張し、固くなったそこは爆発する瞬間を待ちわびている。
「く……っ」
「藍湛、そんなに俺の中気持ちいい?」
「当たり前だ……」
困り果てたような顔をする藍忘機があまりにも愛しく思えて、魏無羨は下腹が疼くような心地がする。
魏無羨の中に入ってから、藍忘機はまだ1度も達していない。達する寸前に魏無羨が止まって欲しいと願うためだ。ずっと我慢を強いられていても、藍忘機は歯を食いしばって耐えた。
藍忘機の顔には玉の汗が浮かび、弱り果てた顔はまるで虐められた後のような有様だった。
「藍湛、出して。俺を感じてイって欲しい。俺が待ってと言っても本心の言葉じゃない。待たなくていい。俺はお前のものなんだから好きに動いて犯せばいい。何をしたって良いんだ。例えば俺を死ぬほど犯すとかさ」
ちゅ、と口付ければ、藍忘機は魏無羨の唇に噛み付いた。
ギリギリまで抜いて奥の奥まで暴く。
藍忘機は魏無羨の喘ぎ声を聞きながら何十回も穿った。
「あっああっ!! 藍湛、そこ、そこがいい!」
「腰を捩るなっ!」
「だってぇ……! あっ! 待ってくれ、そんなにされたら壊れる……っ」
魏無羨の目からはぼろぼろと涙が零れ落ちたが、藍忘機は容赦をしなかった。
魏無羨の目尻に口付けて涙を受け止めながら、藍忘機は獰猛な獣のように魏無羨の中を犯す。
何度も擦られ、魏無羨はどうにか快楽を得られる体勢を取ろうとするが、藍忘機の勢いに負けて奥ばかりを穿たれていた。
「藍湛……俺が悪かった……! お願い、少し緩めて……!」
「君が言ったんだろう。好きに犯せ、と」
「言った! 言ったけど、こんなはずじゃ……」
泣いて許しを乞い始めた魏無羨を哀れに思い、藍忘機は魏無羨を押さえ付けたまま、先程彼が教えてくれた場所目掛けて腰を打ち付けた。
途端、魏無羨の声に色が混ざる。
「あっあんっ! や、嘘、そこばっか、やめ……ひぁっ」
「やめない!」
ごり、と抉られて首を仰け反らせた魏無羨を見て、藍忘機は衝動的に晒された喉元に噛み付いた。
痛いはずなのに、魏無羨はその痛みを快感として受け止め、下腹から脳天に向けて快楽の波が押し寄せた。
「あ……〜〜〜〜〜〜っ……」
「くぅ……」
魏無羨が体全体を震わせて達すると、ぎゅう、と藍忘機も締め付けられ、呆気なく中で果ててしまった。
体をピッタリと重ねて抱きしめ合った2人は、ドキドキと早鐘のように鳴る心臓の音を聞いていた。
「藍湛……すご、い……」
「魏嬰……」
「こんなに気持ちよかったの初めてだ……」
お前だからかな、などと言って笑う魏無羨に、藍忘機は酷く泣きたい気持ちになった。
「藍湛……?」
「君が好きだ」
「うん。俺も死ぬほどお前が好きだよ」
魏無羨は藍忘機の頬をそっと撫で、ちゅ、と触れるだけのキスをした。
啄むようにキスを繰り返しているうちに、魏無羨の中に入ったままの藍忘機のそこは再び硬さを取り戻してしまう。
中で熱い温度と藍忘機の形が変わる様を感じた魏無羨は、怯えながら藍忘機を見た。
「嘘だろお前」
「もう一度」
「む、無理……お前、俺が何回イったと思ってるんだ。もう何も出ないんだぞ」
「中でイけた。まだやれる」
「ちが、イってなんか」
「じゃあ、イけるようにしてあげる」
「ああっ!」
抵抗する腕が邪魔だった様子の藍忘機は、不意にサイドチェストから縄を取り出した。
「は?」
なんでそんな所にそんな物があるんだ、と魏無羨が思っている間に、藍忘機は魏無羨の腕を一纏めにぐるぐる巻きにしてしまった。
「え」
早業過ぎて戸惑っていると、縛られた腕は頭上に押さえられてしまった。
「君にこうしてみたかった」
「縛りたかったってこと?!」
「魏嬰、もっと気持ちよくして」
「ひぇ……」
藍忘機は再び魏無羨の中を穿ち始め、魏無羨は先程の言葉を後悔することとなる。
「お願い、もう許して……! 俺が悪かった……! あんまりにもお前の情熱的な腰使いが好きだからってやり過ぎは良くないと思うんだよ! ほら、俺はお前のものなんだからまた今度やったっていいじゃないか! 今度やる時に最初から俺を動けないように縛って犯したって良いからさ! 無抵抗な俺が泣いても喚いても止めなくて良いから……! ああっ! ダメ、イく……っ」
「許して欲しかったら、君はもう黙ることだ」
翌日、藍曦臣が帰宅する時まで、魏無羨が解放されることはなかった。
終わり!