めぐりめぐる夢のなか「生まれ変わったら、なにになりたいですか」
むせ返るような甘い空気で満ちた部屋。呼吸の度に喉の奥が痺れてしまいそうになる。身体も脳みそも心もぜんぶ溶かされてしまった俺の口から零れた声は掠れていた。
「おや、突然どうしたのです?」
「この前インタビューで聞かれたから、なんとなく」
差し出されたペットボトルを受け取って素直に二口飲み込む。ひんやりとした液体が喉を通る感覚が心地よかった。横から伸びてきた手が俺のペットボトルを奪って行って、二度、彼の喉が上下に動く。その何気ない一連の流れを俺の瞳はぼんやりと映していて、またぼんやりと綺麗だと思っていた。ペットボトルを置いて視線に気づいた彼がふっと口の端を綻ばせた。それから、壊れ物に触れるみたいに柔らかな手つきで俺の頭を撫でる。深く深く触れ合った後のその柔らかすぎる手つきが、俺は大好きで、それから少しだけ嫌いだ。
3362