きみが運命じゃなくても 乾からLINEが飛んできた。
『ヒートが来た』
やっぱりね。九井は溜息をついた。朝から乾は億劫そうだった。前回のヒートから三か月経っていないが、周期がずれるなどよくあることだ。
なんとなく予測はしていたから、仕事を切りあげて家に向かう。乾とふたりで暮らすマンション。ロック解除の時間ももどかしい。まっすぐと寝室に向かうと、乾はベッドの上で胎児のように丸くなっていた。
「イヌピー」
乾が顔をあげないので、覗き込めば、はらはらと泣いている。ヒート中に涙が出るのは珍しい症状ではないが。
ああ、これはなかなか厄介だな。今回のヒートは重そうだ。
ヒートの最中に乾は時々こどもがえりをする。どうやら今回はそれのようだ。
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