受けよ月の抱擁 つい数か月前、第3代ローマ皇帝となったカリギュラは一人、暗い自室で窓辺に座り込み悩んでいた。ローマ市民はもちろん、元老院、属州の誰もが若く美しく血統も申し分のないカリギュラが皇帝となったことを歓迎していた。しかしそれは先代の皇帝ティベリウスの治世があまりに横暴、恐怖、緊縮などで不満が溜まっていたせいであり、自分はというとティベリウスが亡くなって別の皇帝になったことそれ自体と、緊縮を解いて禁止されていた剣闘士試合の開催などのバラ撒きで歓迎されていると言える。
「父上……兄上……何故……」
本来この座につくはずだった父、兄の二人、彼らはみな間接的にティベリウスに殺され、まさか三男である自分が皇帝になるなどとは思ってもみなかった。
3397