退屈吸血鬼と貧弱ダンピール ぬるりと頬をなぞる風は生温く、鉄の臭いを纏っていた。
眼下に広がる街は人工の光に溢れ昼のように明るい。
少し離れた大通りではこちらに背を向ける男の姿。その周りには見慣れた彼の部下たちが立ち回っている。
吸血鬼対策課の白い制服は目立つ。吸血鬼の活性化する真夜中にあってはなおのこと、人工の光に溢れた街中であったとしてもその白はまるで的はここだと主張するように目を引く。
あの大量に蠢く下等吸血鬼の群れも誘導されるがまま大通りに集められたのだ。
この時期恒例のように湧く下等吸血鬼の群れの対処など吸血鬼対策課にとっては特別なことでもないのだろうが、それでも後から湧き続ける群れは厄介にかわりない。
ロナルドにとってはつまらない雑事だが吸血鬼対策課にとっては大事な仕事の一貫といったところなのだ。
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