ティータイム「洗濯物、干し終わった」
シマボシがベランダから洗濯かごを抱えて戻ってくると、キッチンにいたウォロがヒョコリと顔を出した。
「こちらも洗い物終わりました。休憩にしましょうか」
「うむ」
シマボシは洗濯かごを洗濯機の側に置いて、リビングに戻る。
エプロンを外したウォロは、彼女をぎゅっと抱き締めた。
「外、寒かったでしょう」
「日が当たっている所は暖かかった」
「そうですか」
言いながら、彼はほんのりと赤く染まったシマボシの指先を包み込む。
「でも指先が冷えちゃってますから、温まるもの用意しますね」
「……感謝する」
冷えた指先を温めるように優しく触れられると、なんとなく気恥ずかしくて、彼女の頬が熱くなった。
ローテーブルには、すでに小皿に乗せられた四角いボックスクッキーが用意されていた。
そこに、トレーに揃いのマグカップと小瓶を乗せたウォロがやってくる。
「はい、今日はクッキーと紅茶ですよ」
「その瓶は?」
「ジブンが作ったジンジャーシロップです!紅茶に入れると温まりますよ」
「この香りはそれか」
洗濯物干しを終えて部屋に入った時に漂っていた甘い香りの正体を指差すと、彼は正解ですと肯いた。
ウォロは小瓶を開けると、ティースプーンてすくった黄金色の蜜を静かに紅茶へ注ぐ。
それからくるくると軽く混ぜ、シマボシの前にカップを置いた。
「はい、どうぞ」
「うむ」
彼女はふぅふぅと少し冷ましてから、火傷しないようにそっと飲む。
「どうです?」
「……ん、ほんのりと甘くて美味しい」
あまり表情の変わらないシマボシだが、纏う空気はふんわりと柔らかくなった。ジンジャーシロップティーはお気に召したようだ。
「それは良かった」
紅茶とクッキーをお供にしばらく団らんしていると、彼女は自分の手をじっと見、握ったり開いたりし始める。
「どうしました?」
「……時間差で身体が温まってきた」
「生姜の効果が出て来ましたね」
「ほら、指先がこんなに」
とシマボシがウォロの頬に触れると、彼はその手に自分の手を重ねた。
「ウォロ?」
「あったかいですねぇ」
そのまま彼女の手を取ると、その指先に唇を落とす。
「……!」
思わず手を引っ込めようとするシマボシだが、逆にその手を引っ張られてウォロに抱き締められてしまった。
「おや、何だか熱くなってますよ」
「だ、誰のせいだ!」
「ジブンですよねぇ」
──結婚してから何年も経つのに、ホント可愛いんだから。
腕の中でムスッとした表情のシマボシの額に、ウォロは優しく口づけた。