紫焔に熔ける琥珀の夜・1「おかえり、実休さん。酒盛り、楽しかった?」
「ああ、ただいま。楽しかったよ」
文机に向かい、来週の献立表の作成と必要な仕入れの計算をしていたところで、実休さんが僕の部屋に戻ってきた。
実休さんはつい先日この本丸に顕現したばかりだ。それで、極の練度も上がりきって時間がある僕が、兄弟刀ということもあり彼の教育係を担当していた。本丸の生活に慣れるまでの一ヶ月間は、同じ部屋で寝起きすることになっている。
今夜は中規模の酒盛りが行われていたけれど、僕はあまりお酒が得意ではないのと、献立表作りの仕事があったから、最初だけ顔を出して早めに引き上げていたのだった。
「光忠は……まだ仕事が?」
実休さんと福島さんは僕のことを『光忠』と呼ぶ。ふたりとも『光忠』なのだから、そう呼ばれるのはどうかと思ったのだけれど、彼らの中でこの本丸の『光忠』は僕のことらしい。
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