後輩という人種はよくわからないが、とりわけアズール・アーシェングロットのわけのわからなさは群を抜いている。
定石通りの打ち手かと思えば、よくわからない、素人同然の一手を指す。ボードゲーム、とりわけチェスやオセロなどでは定石というものが存在しており、幾千幾億のパターンを練るという思考が存在しているが、彼の打ち方は概ね予測のつくものばかりだ。
なので、それに応じて適度な緊張感を持たせる一手を打ってやればいい。魔導工学分野で名を馳せる、異端の天才であるイデア・シュラウドからしてみれば、アズールとの対局は単なる思考パターンの累積に過ぎない。
「…フム」
神妙な顔をして白の駒を動かし、アズールは盤面を睨みつけていた。黒と白のコントラストはどちらかといえばアズールの持ち駒である白が優勢だ。オセロというゲームは何が起こるかわからない。既に四つの角のうち、2つを掌握している黒がこの先どんな逆転劇を起こすのか、イデアの頭の中にはいくつかパターンが描けている。
6405