綿花糖「……冥界の、いつまでそうしてるつもりだ?」
顎下から動かない銀髪の頭を始皇帝は軽く叩いた。かれこれ半刻ほど抱きついて離れないその人が他の神からも恐れらる冥界を統べる神だとは、到底信じられないだろう。
部屋に入ってくるなりがっしりと胴を抱きしめられ、胸に顔を埋められた時は驚きもしだが、流石に長い。何度か引き離そうとはしたが、無駄な抵抗に終わっていた。
呼びかけても応じる声もないまま抱き締められているのは、いくら相手が好いた者であっても不快ではある。
ずっと立ちっぱなしな体勢も辛い。
「不好」
頬を膨らまし、ひとつ強めに離れない頭を平手で叩く。
「痛い」
地を這うような低音が胸元からきこえた。
「いつまでそうしているつもりだ?」
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