想いが叶う朝には「Vox〜んふふ〜」
小動物と錯覚するようなかわいい鳴き声を上げたその人は、そのまま俺の肩にのせた頭を擦りつけてくる。
思わず、大きなため息を吐いた。
途端にムッとしたのか、ばっとこちらを向いた彼に頭を軽くはたかれた。
再度ため息を吐きそうになって慌てて呑み込む。
Voxは、もうだいぶ参っていた。
とにかく、数時間前の自分に言ってやりたい。Ikeには飲ませるな、と。
VoxとIkeは家飲みの真っ最中であった。
久々にふたりきりでご飯に行く機会を得てウキウキでいたところに、Voxの手料理が食べたい、と驚きのご指名があったため家へ招いて料理を振る舞うことにしたのだ。
その道で生きているプロ並みだとはとても烏滸がましくて言えないが、400年も生きた鬼にとって好きな人の胃袋を掴むことなど造作もなかった。
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