あなたのおかげ 隣で作業をする女の横顔を眺めて、ベリアンは小さく感嘆の息をついた。
普段、穏やかに笑みを湛えていることの多い顔は、真剣そのもの。手元の書物に落とされた瞳が、忙しなく文章を追っている。ゆらゆらと揺れるロウソクの火に照らされたその姿には、得も言われぬ美しさがあった。
「……ベリアン?」
「っ、はい」
見つめていた横顔が、ベリアンのほうを向く。彼女はちょっと困ったように、眉尻を下げていた。
「どうかなさいましたか?」
「そういうわけじゃないけど……なんというか、あの……ちょっと、こっちを見すぎじゃない?」
女はずいぶんと躊躇ってから、恥ずかしそうにもごもごと言った。どうやら、熱い視線を注いでいたことに気づかれていたらしい。
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