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    カナト

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    カナト

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    肉体言語「アイツまた何かやらかしたのか」
     自身の副官にガミガミと叱られている主、大魔王の少女を見て、ユシュカは助けるでもなくのんびりと観察した。
     愉快犯もここに極めりな少女は、時々とんでもない爆弾を持ってきてはナジーンに叱られているのだ。
     ネクロデアで暴走行為をしたり、アストルティアで宝箱を釣ったりとその行動は予想がつかない。
     今度は何をやらかしたのやらと見やっていれば、叱るために屈んでいたナジーンの顔をじっと見、そのまま背伸びをして口付けた。
     流石のナジーンも突然のことに虚をつかれたらしく、固まってしまっている。対する少女は機嫌よくにこにこ笑っているのだから世話がない。
     ユシュカは力関係の差を明確に理解した。ついでに将来ナジーンが尻に敷かれるだろうことも理解した。

     さて、今度はユシュカがナジーンに説教を食らっていた。これもまたいつものことである。
     アストルティアが楽しすぎていつものように抜け出そうとしたら見つかったのだ。観光誘致の為に視察に行くのだとかわそうとしたが、今回はそうは問屋が卸さなかったらしい。
     結果、ネチネチと耳に痛い小言を聞くはめになってしまった。
     さてどうしたものかとナジーンの顔を見つめて、ユシュカはおもむろに顔を上げ……。
    「いだだだだだだ!!!!」
     アイアンクローを食らった。
    「何をしようとしたんだナニを!」
     さっきまであった敬語が裸足で逃げ出している。
     ユシュカとしては公式の場でなければ一歩引くような立ち位置でなくてもいいと思っているが、カタブツで真面目なナジーンはなかなか親友という心置けない顔は見せてくれない。
     悪友とも言える雑さに久しぶりだと喜んでいいのか悪いのか。喜んだらユシュカがMなような疑惑が噴出する気もする。
     結果、ユシュカに対するナジーンの説教は更に追加されたのだった。

     その日はユシュカも少女も正座させられてナジーンの説教を食らっていた。
     ナジーンの頭の血管の心配をしつつ、心労で禿げるのではと生え際も気にしている。自重する気は無いが。
     ユシュカと少女はそんなどうでもいいことを目線で会話している。なお、少女は禿げてもナジーンはかっこいいと思うらしい。
    「聞いてるんですか」
     ギロリと剣呑な光を灯した左眼が睨みを効かせ、ユシュカと少女はアイコンタクトを中止した。
     いくら説教を聞いたところで、ユシュカも少女も反省する気は一ミリもないのだ。馬耳東風、馬の耳に念仏、糠に釘、暖簾に腕押しとはこのことである。
     そうして、ユシュカと少女が欠伸を噛み殺さんばかりとなった頃、そういえばあんなことあったな、とお互い同じことを思い出した。
     ここからがファラザードの問題児と世界を股に掛ける問題児である。
     顔を見合せた二人はそのまま顔を近づけて……。
    「っ、ンンン……!」
     何故か少女がナジーンとキスすることになった。
     ちなみにユシュカはぞんざいに顔を手で押さえつけられている。お前それ主にすることかと突っ込むものはいない。
     隣では濃厚なキスが繰り広げられているらしく、指の隙間から覗くシーンはR指定した方がいいんじゃないかと思われるものだった。
    「説教内容が増えたので一旦失礼します」
     口を離し、お前も後で追加の説教だからな、という視線だけ向けてナジーンはぐったりとした少女を抱き上げる。荷物担ぎとかではなく、大事そうに抱き上げているところに感情が見え見えだ。
    「あ、あー、ごゆっくり……?」
     恨めしそうな少女の視線を受けつつ、ユシュカは今は魔界の最高権力者を見捨てる選択をした。忠誠を誓った魔王? そんなものはここにはいない。
     裏切り者〜! と言わんばかりの少女が連れ去られ、その後、ご満悦のナジーンと肉体言語を叩き込まれて瀕死の少女が目撃されたという。
     なお、ユシュカも少女も反省も後悔もしないので度々肉体言語が発動したのは言うまでもない。
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