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    ぽうはっちゃ

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    ぽうはっちゃ

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    企画開催ありがとうございます!
    🔮🐑
    ぬるいホラー注意
    🐑が悪夢を見る話
    💜もちらっと出てくる

    足は錆びて、腕は桜の下にねえェね、銀髪さん
    こっち見た、見たね、見た!
    可愛い
    綺麗
    すごい!!!!!!!!
    かわいいかいかわかいわねぇ
    ずっと一緒
    どうしよう?
    大事な人なら
    ずっと一緒!
    どんな人かな、どんな人かな

    ジジジジ、ザジ、ぐぢュ
    がりゅ、がじゃばぢゃ
    ジジ、じじじ、きゅ、きょきょ、きょう

    「今日は休日だよ蜿ッ諢帙>縺阪∩。遊びに行こう?」

    甘い目覚ましで目が覚める。
    声の出所を寝起きの眼で辿れば、隣に寝転がる恋人の姿が見えて、ファルガー•オーヴィドは朝の目覚めを自覚した。
    寝室のカーテンは開いていて、どんよりした色を部屋に投げかけている。
    今日は曇りらしい。

    「ああ、もちろんだ浮奇。どこ行こうか?」
    深いアメジストの髪に、砂糖を擬人化したような甘い顔。
    誰が何処で見ても眼に焼き付く美貌も、いつも通りだ。
    ただ今日は、その美しさが余りにも「完璧」で、ファルガーは首をかしげた。
    彼だって人間なのだし、寝起きはふにゃふにゃで、声も低くなる。それが心底愛らしいと思っているのだが、今の浮奇は髪の毛1本の方向まで何の狂いもない。
    紅く均一な唇が開く。

    「うき、うき……俺の名前、うきって言うの?」
    「? どうしたんだ急に、寝ぼけてるのか?」

    浮奇、そう、確かに浮奇だ。顔も、体も毎日見て、感じている彼そのもの。

    それなのに

    「あのね、すっごい綺麗な場所を見つけたんだよ」

    なぜか。

    「物凄く大きな桜がぽつんとあるんだ。まだ満開だと思うから…」

    違和感を感じる。

    ……気のせいか?

    …………気のせいだな。寝ぼけているのはこっちなのだろう。
    「ねぇ、聞いてる?」
    ぷぅ、とリス顔負けで微笑む浮奇。
    「あ、すまない。花がどうしたって?」
    「だから、桜が満開で綺麗なの!」
    「満開?この時期に?」
    今は5月だ。
    少なくともここは、5月に桜が満開になる様な場所では無い。
    「だからこそ見に行かないと、こんな機会無いよ」
    「ああ、浮奇がそんなに言うならさぞ綺麗なんだろうな」
    ふは、と笑えば、ニコニコした微笑みを返された。




    「おお……!凄く綺麗だ。」
    浮奇の言う通り、とてもとても大きい桜は満開で、山の中ひっそりと咲いていた。

    立地もあってか、こんな見事な花なのに観に来る人間は1人も居ない。
    「本当に秘密のスポットなんだな」
    「えへへ、言ったでしょ特別だって。誰も来やしないから、もっと見やすい場所に行こう?」
    促されるまま山道を外れ、腐葉土を踏み進んで行く。
    やがて、やや遠目から見えた木はどんどん存在感を増していった。
    頭上いっぱいに広がった薄いピンクの花びら。
    桜の作る美しさは、鳥籠の様に見る人を囲んで包んでいき、
    吸う息は、重たく甘く、どこか冷たくなっていく。
    ふ、と桜から目を離せば、上を見上げて惚ける浮奇がいた。
    「ねえ、蜿ッ諢帙>縺阪∩。桜って、どうしてこんなに呑まれそうになるんだろうね」

    ゆっくりファルガーの方を向き、浮奇は続ける。

    「桜は散るから美しいって言うけど、ずっと咲いてる方がいいに違いないよね?」
    緩く散る桜の中で、浮奇はファルガーの両手を握る。
    「蜿ッ諢帙>縺阪∩、桜になりたい?」


    ミシ、と片手から音がした。


    「浮奇? 痛い……」

    「蜿ッ諢帙>縺阪∩、桜より綺麗。」
    「蜿ッ諢帙>縺阪∩、名前を教えて。」
    「蜿ッ諢帙>縺阪∩、ずっとに一緒にいよう。」

    メキャ、と音を立てて呆気なく崩れる腕がスローモーションのように目に映る。
    ニコ、と浮奇が笑った顔を最後に意識が遠のいていく。
    風はごう、と鳴る。
    桜はぶわ、と散っていく。
    そこに紛れて、千切れた腕の感触が確かに。



    「はっ!」
    バチ、と眼が開いた。
    見えるのは見慣れた天井。浮奇といつも共に寝ている寝室の、なんてことない天井だ。
    「ふうふうちゃん……?どうしたの?」
    慌てて横を向くと、寝ぼけまなこの浮奇が、いつにも増したゆるゆるの声を投げかけていた。
    「浮奇、今日って、平日だよな?」
    「ん〜〜?そう……お休みは明日…」
    何故だか凄く安心して、思わず手を浮奇の頬に当てれば、なんてことない、寝起きの人間の温もりが手のひらいっぱいに広がった。
    「ふうふうちゃん?」
    「あ、ああ……いや、何でもない。ちょっと悪夢を見ただけだ」
    「そうなの……?大丈夫?」
    「あはは、大丈夫だよ」

    浮奇の頬から手を離して、緩く己の腕をさすった。
    ちゅ、と浮奇の頬にキスをする。
    「浮奇と一緒に桜を見た夢なんだが……今考えると、あれは浮奇じゃなかったな。」
    本物の浮奇はあんな、共にいて恐ろしくなるような存在ではない。
    夢の中は判断が鈍っていけないな、と独りごちる。

    そう、本当に悪夢を見ただけ。

    ただ、元から無い生身の腕が、確かにひしゃげた感触が残っていて気持ち悪いだけ。

    嫌な跳ね方をしている心臓に気づかない振りをしていれば、今度は浮奇の手がファルガーの頬に優しく当てられた。

    「大丈夫だよ。どんな事があっても、ふうふうちゃんが俺を助けてくれるように、俺も困った時は力になるから。」

    「…ありがとう、浮奇」


    ◇◇◇
    ◇◇




    「今日は休日だよ蜿ッ諢帙>縺阪∩。遊びに行こう?」
    「ああ、どこに……」
    起きあがろうとすると、自分の異常に気づく。腕が無い。昨日外した覚えはないし、周りを見渡してもパーツは見当たらない。
    「なぁ、俺の腕知らないか?」
    「それはオレも気になってるよ。確かにあるはずなのに、無いんだ。」
    眼を猫より細めて、唸る様に言葉を絞り出す。
    今日は機嫌が悪いようだ。

    「まあ、いいや。蜿ッ諢帙>縺阪∩、遊びに行こう?」

    というか、またこの夢か。

    朧げに思い出したこの前の記憶に、思わず声が漏れた。 

    「お前、浮奇じゃないよな?」

    片眉が上がっただけで、彼の表情はニコニコのまま崩れなかった。

    「……あはは、どうしたの急に」

    満面の笑みが近づき、じぃ、と眼を見つめられる。

    「オレは浮奇だよ。蜿ッ諢帙>縺阪∩の恋人」
    手が優しく頭を這い回る。

    「そうでしょ?」
    声を流し込まれる。
    瞳に俺のマヌケな顔が映る。

    上手く頭が働かない、
    ぐわぐわ視界が揺れて、瞬きをして、口を開いて、
    「……すまない、寝惚けてたみたいだ」

    俺は何を言おうとしてたんだっけ……

    「えへへ、いいよ別に。それより、今日は遊園地に行こうよ」


    ◇◇

    さびれた遊園地というものはどうしてこうも迫力があるのだろうか。
    浮奇につられて、これまたさびれた門をくぐる。
    門のアーチに刻まれた名前は、雨で滲んだ鉄でよく見えなかった。
    「お、っと、」
    上を向いていたからか、腕が両方ないとなるとバランスがどうも取りずらい。
    「浮奇、もう少しゆっくり歩いてくれないか?」
    「ん?オレが支えてあげるよ。」
    すっ、と後ろに回られる。
    顔が見えないと、どうも不安だ。

    此処にもやっぱり人はいないので、どんなにのろのろ歩いても、迷惑はかからないようで安心する。

    どこか空回りするBGMは辺りに響き渡って、より虚しく感じさせる。

    道の端にはやつれたテディベアが横たわって、
    烏はそれをついばみ、首をかしげていた。

    「遊ぼう蜿ッ諢帙>縺阪∩!まず何処行こっか」



    ミラーハウスに、お化け屋敷、巨大迷路、小さな観覧車。etc etc…
    さんざ振り回され、この体にはちょっときつい。が、こんなにはっちゃけた浮奇もそうそう見ない。

    「浮奇、はぁ、少し休まないか?」

    「休み、休みたいの?なら……あれに乗ろう!」
    指差す先には、サーカス小屋の様な屋根に、上から吊るされる白馬の馬達。遊園地の華、メリーゴーランドだ。

    「これ、動くのか?」
    これまでの乗り物もボロボロだったが、これは輪をかけて酷い。殺人ピエロとタメをはれる迫力だ。
    そんな古代物に臆せず浮奇はずんずん進む。

    「一緒に乗ろう。これ二人乗り出来そう!」

    …わざわざ2人で乗ることは無いが、1人だと持つ腕がなくて体が下に落ちるだけだ。

    頷き、腰の高さの白い柵を開けて、舞台へゆっくり歩く。
    止まった回転木馬の眼に意志はこもっておらず、するりと額を撫でても冷たい手触りがするばかり。

    半分抱え上げられながらどうにか乗ると、どこからか錆びたBGMが鳴り響く。
    馬はぐるぐる、ぐるぐる、回っていく。
    緩やかに、緩やかに。
    いつまでもまわり続ける。
    何周すれば止まるんだろうか?

    「ねえ、ずっとこのままがいいと思わない? 俺今最高に幸せ。これが永遠に続くんだよ?」

    後ろからぽつりと呟かれる。

    「言っただろう?幸せはずっと続くもんじゃぁないっ…て……」

    いつかと似た質問に返答しようと振り返れば、
    ぐちゃ、と歪んだ浮奇の顔がそこにあった。
    般若が呟く。
    「なんでそんなこと言うの」
    「浮奇…でも俺は」
    「こんな事立て続けにしたく無いんだよ?ほんとだよ?」
    がし、と太ももを握られる。手をのけようと触ると、機械でも、生身でも無いざらりとした感触。
    足が、錆び付いて、古びた白馬と一体化している。
    無理に動かせば、ポッキリ折れてしまいそう。
    「な…」


    「確かに腕は俺のにしたのに、どうしてだろうね」
    「でも、今度は足が無くなるよ。」
    「夢にずっといた方がいいよ。腕も足も使えないんじゃ、大変だよ?」
    「安心して!俺がずっと世話するから」
    「蜿ッ諢帙>縺阪∩、頷いてよ」


    浮奇、浮奇は目の前にいるのに。こいつじゃない。こいつじゃない。
    言い知れない違和感が脳を支配しても、足も、体も動かない。
    思わず眼を瞑る。
    口から零れる言葉は、誰に届くか。
    「浮奇……助けてくれ」


    ◇◇
    数日前


    「ふうふうちゃんの様子がおかしかったんだ」

    開口一番に聞かされた言葉に、シュウはパチクリと瞬きを返した。

    「具体的には?」
    「勘」
    「勘かぁ」
    「この俺の……エスパーの勘だよ。ナニかに取り憑かれてる」
    いつに無く深刻な浮奇の顔にシュウも真面目になり、ぐ、と身を乗り出す。
    「本人は自覚ありそう?」
    「悪夢を見ただけって言ってた。」
    「悪夢ね……」
    「そう、夢、となると呪術師に聞くのが1番いいと思って」
    「うん、正しい選択だと思うよ。僕ら呪術師の対処する物は、夢メインの怪異も少なく無いからね」
    「そいつを叩き潰せる方法はないの?」
    かけらでも害をあたえているなら心から後悔させてやる、と眼が物語っている。

    「いろいろあるけど、浮奇が協力してくれるのが1番手っ取り早いかな」
    「なんだってやるよ」

    「うん。浮奇には悪夢に入って、こう叫んで欲しいんだ」

    ◇◇

    「ファルガーオーヴィド!!!」

    パチン。

    「へ、」

    視界がクリアになり、夢の幻想が泡と消える。
    ここは遊園地では無いし、後ろにいるのは浮奇では無い。得体の知れない、ナニか。
    脳にかかる霧が晴れる。
    「迎えに来たよ」
    前には、息を切らして、乱れた髪の愛しい人。
    本物の浮奇が、札のような物をナニかに投げた。

    バチン!!!!!

    「ア、ギャァァ!!!グガギュりゅュ」

    「その糞ビッチから今すぐ離れて!」

    後ろには、爛れて苦しむ肉の塊。
    慌てて動こうとしするが、足は囚われて動かぬままだ。
    「くそ、」
    …躊躇っていられない。
    無理矢理に足を動かし、痛みに歯を食い縛りながら気合で捻じ切る。
    達磨になり、バランスを失ったファルガーの体をキャッチして浮奇は言葉を吐いた。

    「ふうちゃんと永遠に一緒なのは俺だから。そこで呻いてろよ屑」

    いうや否や、抱きかかえたまま一直線に走り出す。

    「出口はどっちふうちゃん!?」
    「次の道を右だ!」
    あっという間に門が見え始める。
    この夢は、思ったより小さいらしい。

    「ぁ、ギュ、がだぁジャぁ!まで、まづで、!!」

    「しつこい!」
    とどめとばかりに、札を肉塊に投げつけて、門に滑り込む。

    白い光りに一瞬包まれて、

    「はっ!」
    「はぁ、はぁ、はぁ……」
    勢いよくベッドから起きあがった。


    「あ、起きた」
    やほ〜と手を振られ、何も分からないまま振り返した。
    「何でシュウがここに……?」
    「浮奇に頼まれたんだよ。それに、可愛い後輩が取り憑かれてるとなっちゃあ助けないとね」
    それにしても、と笑顔で続けられる。
    「ファルガーは厄介なのに惚れられたね、でももう大丈夫だよ」
    「?とり、つかれて?それってどういう」
    「ふうふうちゃん……!無事でよかった…」

    混乱と安堵がぐちゃぐちゃのファルガーに、物凄い勢いで抱きつく浮奇。

    暖かい浮奇の体温に何より安心して、強く抱きしめ返すと、自分の冷えた体温と心細さが、時間差で溢れ出した。
    深呼吸して、シュウに質問をする。
    「もしかして、ヤバい状況だったのか?」

    「ヤバい、何でもんじゃないよ。君はあの夢を見続けていたら、次に無くなるのはお腹だったかもね。」

    機械では無いお腹を見つめ、ゾッと背筋が寒くなる。
    「なぁ、俺が何とも無かったのって、もしかして」
    「腕と足は機械だったから、欲しいと思っても手に入れなかったんだろうね」
    ぎゅう、とファルガーを抱きしめる愛しい腕の力が強くなった。

    「ふうちゃん、何をどうされたのか、絶対、後で、逐一教えて」
    「あ、ああ」


    その後、
    気分どう?平気?よし。これ何かあった時の塩、あげるね。じゃあ僕もう帰るね〜と家をあっという間に、優雅に去っていった呪術師を見送り、2人はソファで疲れ切って沈んでいた。
    「……後でちゃんとお礼しないと」
    「本当にな」
    シュウがいなかったら今頃どうなっていたことか。
    「シュウもそうだが……浮奇、本当にありがとう。浮奇のお陰で、今此処に居られるよ」

    「こっちこそ、俺を呼んでくれてありがとう。頼ってくれて嬉しい。でも、もっと、もっと俺を頼ってよ。それとも力不足?」
    「そんなわけないだろう!最高の恋人だよ」
    「じゃあ、今1つワガママを言って」
    「え」
    「いつも俺が甘えてばっかだし。たまには頼って」
    ファルガーは目線をさまよわせ、ゆっくり口を開く。
    「暫く休日、外に出るのは懲り懲りだ…」
    思わず眼を丸くする浮奇。
    「もちろんだよ、てか、もっとおっきいお願いでいいんだよ?」
    「あーいや、それもそうなんだが…家デート?というやつのお誘いというか……」
    語尾が萎んでいくのと対照的に、浮奇の顔はパァァァァと明るくなる。
    「勿論だよふうふうちゃん〜!!大好き!!!」
    開け放たれたカーテンからは、快晴の空が見えている。
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    Replies from the creator

    recommended works

    ぱにぽこ

    DONE🔮🐏・🐏🔮
    固定なしでも読めるはず……!(友情出演🎭)
    お昼にpixivに上げてます、中身同一人物なのでご安心を〜〜!

    これを英語でも書きたい……! でも無理……!
    翻訳出来なさそうで心折れかけてます……
    器用な君と、不器用な君とで「あー、ファルガー? その後ろの何?」
    「見ての通り浮奇さ。ただ少し拗ねてるんだ」
    「……拗ねてない」
    「いいや、お前は拗ねてるね!」

     所用を終え、closedの看板が上がっている浮奇のバーにやってきたアルバーンは、身内特権で躊躇なく入店した。そしてファルガーの腰に纏わり付く浮奇とそれを全く気にも留めずグラスを傾げるファルガーの姿を目にすることになったのである。ファルガーが言っている通り、浮奇は不満を隠そうともせずファルガーの腰にぎゅうぎゅうと抱きついており、アルバーンの姿を見留めるとより一層腕に力を込めたようで、ファルガーはその腕に優しく自身の腕を重ねた。ファルガーが俺とお前の酒を飲んでるんだぞ、と嚥下したすぐ後の低い声で囁けば浮奇は思うところがありながらも腕を緩めたらしい。ありがとうなんて言いながら再び酒を煽るファルガーは、まるで浮奇のトレーナーのようだ。彼は浮奇にしか指示を出さないし、浮奇も彼からの指示しか受け付けない。
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