雨(ワンライ) ぽろんぽろん。ぽつぽつ。ぴちゃんぴちゃん。
雨粒が傘に当たって跳ねる音がする。それから地面に落ちる音、踏み出した靴に跳ね返る音。
雨の日は案外賑やかだ。雑踏の音は遠くなって、雨の音が鼓膜によく響く。
任務の帰りだった。五条とふたりで行くことになった任務は、驚くほど弱い呪霊だった。わざわざ自分たちが行くほどではないのではないか、と驕ってしまうほどの。
しかし呪霊は弱い代わりに速かった。逃げ足が早く、しかも縦横無尽にあちこちに逃げ回る。躍起になって追いかけても無理だと悟り、二手に分かれて逃げ道を塞いだ。
追いついてしまえば呆気ないもので、追いかけっこに苛立っていた五条があっという間に祓ってしまった。機会があれば取り込みたかったのにと文句を言えば、五条は早い者勝ちだと舌を出した。顬がひくりと脈打つ。
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