第39回猗窩煉ワンドロ「寝癖」「背伸び」「地獄のエビフライ」 仄暗い室内でも陽だまりのように明るく佇む少女の頬が、みるみると涙に濡れていくのを見届けてこれが夢だと気が付いた。
夢だと理解した今でも泣いていた少女のことが気がかりで、直ぐに傍へと駆け付けてその冷えた頬を拭いたかったが、閉じた目蓋に陽が射し、再び眠りへ落ちることを妨害する。
夢に見た光景は、目蓋の裏側に透ける暗闇へ塗りつぶされて、徐々に少女の姿を朧げにした。
*
「おはよう」
起き抜け一番の発声は、僅かに掠れて普段の勢いの半分もない。開いているか怪しいほど、申し訳程度にしか持ち上げられていない睫毛が今にも下目蓋へ接触してしまいそうで、寝癖もそのままにどうにかこうにかベッドを抜け出たといった様子に同居人の声に笑みが含まれる。
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