【孤独な羅針盤と星雲旅行】「カイト、あの南東に位置する星の名だが…」
「アルタイルだな。先ほど本で教えたばかりだろう」
「……再度反芻しようとしただけだ、細かい男だな相変わらず!」
「どうだかな」
微かに零れた笑い声を受けながら、ミザエルは夜風に当っているのに火照った体温を誤魔化すかのようにカイトへ視線を向けることはしなかった。
いつからか夏に近づく頃から少しばかり外へ出て、殆ど毎晩のように行われる二人の秘密。
誰も居ない公園の高台で天体の図鑑と本を開き講師の如くページを捲るカイトは、天空を眺めるミザエルを見守りつつも彼があらゆる物に興味を抱いていることが好ましかった。
この世界は素晴らしい。だからこそ多くのことを教えられるならば、彼の手を取りその歩む手助けをしたいと思ったのは、ミザエルに過去の自分を重ねてしまっているのも気づいていた。
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