攻め優位ぶぜまつ(仮)途中まで――嫉妬とは、自分とは縁遠い感情だと思っていた。
豊前江は、逆巻く炎のような苛烈な感情を秘めながら、自室で松井江を待っている。二人だけで話したいことがある、と言ったときに見せた小首を傾げた様子を反芻する度に、頭も心も灼けつきそうになってしまう。
ある日、松井が誰かに懸想しているという情報を小耳に挟んだ瞬間、豊前は己の内に赤々と燃え上がる感情があることを自覚した。松井への庇護欲と独占欲が綯い交ぜになって形成されたその感情は、あっという間に豊前の胸を焦がしていった。
しかし、どんなに身を焦がそうと、どんなに心を灼かれようと、その感情に気づくのが遅すぎたことには変わらない。松井の心は、既に自分ではない誰かに向けられている。そう思うだけで、豊前は体の奥から煮え立ちそうになるのを感じていた。
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