空閑汐♂デイリー【Memories】26 金属製の床を高らかに鳴らしながら駆けていた。リバーシブルのブルゾンを走りながら裏返し羽織り直せば、背中には軌道警察局のロゴがはためいている筈だ。こうする事で少なくとも自分が職務中の警察官で、目の前を走る男を追っている事が周囲にも分かるだろう。空閑はそんな計算と共に走り続ける。瞬発力はあるのだろう目の前の男は、チラとこちらへと視線を向けてその速度を上げた。
「――っ! 待て!」
バディを組んでいる筈のグェーリィンヌは隣には居ない。多分置いてきてしまった。けれど、彼を待っていれば男を見失う。追いつきそうで追いつけない、あと少しで手が届くが――ここで失敗すれば見失うリスクが高い。それだけは避けなければ。
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