【夏五】早い者勝ち「ねぇそこのお兄さん、随分悪いモノ憑けてるねぇ。このままじゃ君、あと数日で死ぬよ。間違いない。僕にはわかる。死にたくない?なら助かる道はひとつだけ、僕と一緒にそこのファミレスに行こう」
誰あんた、とか。なにその胡散臭い話、とか。この後約束があって、とか。言い返したい言葉は喉元まで次々這い上がってくるのに、実際に出たのは「ああ」だとか「ええ」だとか「うう」だとか、意味をなさない音だけだった。OKとも応えていないはずなのに、半ば引きずられるようにファミレスに入ったのは大体10分前。
平日だというのにそこそこ混んでいる店内の一角、向かい合って座る謎過ぎる怪し過ぎる男は、浮ついた声で期間限定パフェの注文を終えたところだった。席について、メニューを広げて数分。季節限定にするか、スペシャルにするか悩んだ末での結論だ。
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