花咲く都の菫橋について 公国の中央、と言いましても、実際の地理で言えばだいぶ西よりです。
西方は島ですからね。まぁこの世界の地形は曖昧なのですが、住んでる人たちの感覚からすれば、中央神殿は大陸の西端、海に臨む丘にあります。
光る花咲く丘に建つ白亜の神殿。その裾野のように広がる街並み。南の豊富な食材と歌、東の花や木材、北の高品質な製品、西の海鮮、あらゆる人材が集まり花開く、公国の中枢、文化の最先端。
白い柱の並ぶ神殿には、原則として許しを得た神官しか入れない庭があります。公国各地の花を集めて咲かせたそこは、【菫橋(すみればし)】と呼ばれる設備です。
それは果てを目指す島が公国に加わってしばらく経った後のこと。東の森で霊菫(たますみれ)を咲かせている樹に、南の林で霊菫を咲かせているのとそっくりな樹がありました。というかそのものでした。ええ、東の森と南の林に、その樹は同時に生えていたんです。
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