わがまま「アシュリー家は本来わがままな家系なのだと、義父より聞かされている。」
橙に染まる夕暮れの庭園で、シリルは彼らしくもなく自身の足元に向けてボソボソとつぶやいた。
モニカは「わがまま」と心の中で復唱した。いつ何時でも自分の思うがままに振る舞う彼の美しい義妹を思い浮かべてから、なんと彼に似合わない言葉だろうと改めて考えた。彼はいつでも誰かの為に必死に己の役割を果たそうとする。モニカの尊敬する人だ。
「義父には、お前はもうアシュリーなのだからそろそろわがままを貫き通す強さを持てと。昨夜は里帰りしたクローディアにも罵倒された。」
罵倒。何故錚々たるアシュリー家の面々がシリルがわがままでない事にそんなにも揺れているのか。何が起こっているのだろうとモニカは緊張からこくりと唾を飲んだ。
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