好愛 一般的に休日は休みの日だが、天生目にとっては家業に関わる仕事を熟す仕事日である。まだ未成年なせいで、自分が起こした興行や情報収集だけでは有るが、使える組員に指示を出していくだけでも時間はあっという間に過ぎ去った。
今日も朝から働いて、一息ついでに親友の様子でも見に行こうかと、古く狭く汚いアパートの一室へ足を向けた。
「僕だよ、空良」
ドア越しに声を掛けると、天生目?、と呼ばれた後に、開いてるぞ、と声が続く。
「空良、こんなボロアパートとは言え、鍵も掛けないのはちょっと不用心じゃないのか? まぁ、キミなら泥棒の一人や二人、どうとでもなるんだろうけどさ」
遠慮無く上がりつつ、揶揄い混じりに小言を言うも、部屋の主人たる鬼島はテーブルに肘を突いて、何処か上の空で生返事をするだけだった。物珍しい親友の姿に、天生目が首を傾げる。
3070