写真「お願い! 鬼島くん! 一晩でいいから、天生目くん貸して!!」
「天生目は物じゃねぇんだが……」
吉走寺駅前にある、バー黒兎。閑古鳥が良く鳴く義母の店は、鬼島空良にとって幼馴染で親友の天生目聖司との溜まり場でもあった。最近は、八月に起きた怪異と呼ばれる存在のせいで増えた人間関係により、義妹の愛海の友達、ツケで飲もうとするダメ親父、金払いは良いが神出鬼没の女マジシャンが加わった。
そして今、準備中の店へやけに真剣な表情でやって来ると、開口一番、土下座せん勢いで謎のお願いをして来たのは、愛海の友達、オカルト狂いの葉月薫。
鬼島は困惑に目を瞬きながら、那津美と愛海が不在である事に安堵した。
「ってか、貸すってなんだ、貸すって」
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